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暗闇の終わり



キース・ピータースン

「ニューヨーク・スター」社のトップ記者、ジョン・ウェルズのシリーズは四作まで発表されている。
あとはない、良質で好評だったのに待っても無駄らしい。

少し古いが牧歌的な色彩の暖かい表紙も好みなのに終わるのか(しつこい)。
心から好きな本はなかなか見つからないが、気に入ったものは読み終わるのが少し寂しい。
ランシングのファンも泣いたとか。
面白い本が待っていると思うとつい出先でもウキウキしてしまう。
小説は現実との距離が遠くなるほど面白い、ただそれだけの理由で時間を消費しているとしたらどうなんだろう。
しかしやめられないものは止まらない。
無駄に思える時間も積み重なれば何か貴重なものになるような気もするようなしないような。

ハードボイルド色が濃いミステリだが、文章は非常に簡潔で、風景描写は雨や風や、雪の音まで漂ってくるほど情感が溢れる名文である。

解説には、リリカルで(この言葉、一時流行ったなぁ)酔わせると書いてある。

彼は芯の強い記者魂で、命がけで事件の核心に迫っていき、常に一面のトップ記事を書いてはいるが、普段は組織に組み込まれ、上役に呼ばれると汗をかき、クビを心配する繊細な部分もある。

ただ、溺愛していた娘を自殺させた過去から抜け出せないで、タバコと酒の悪癖に浸かりきった暮らしをしている。

同僚のランシング(キュートな美人で根性もある優秀な女性記者)からは慕われているが、45歳と21歳という年の差を盾にして「ランシング、そんな眼でこっちを見るな」と
彼女の恋心から逃げている。

彼はとりかかっている事件で、やっと公判に差し出すことができる、運輸担当官の証人を見つけたところだった。

ところがハイスクールの生徒が連続して三人、自殺したという、ウェルズは過去の傷のためにこの取材は避けたかった。
しかし社会面より身近な事件を載せたがる上司の命令で、心ならずも出かけないといけなくなる。

自殺の背景になった家庭や学校を取材しているうちに、生徒が抱えていた問題に気が付き、ついに殺人事件に入り込んでしまう。

彼が狙われはじめた頃から、スタイルはミステリからアクションシーンの多いハードボイルドに徐々に変わって行く。
自分のやり方を通す硬派ながら、ウェルズの他人には見せない息絶え絶えの蔭の部分と、同僚とかわすテンポのいい会話。魅力的なキャラクターも揃っている。
のに。

ジョン・ウエルズ シリーズ
暗闇の終わり
幻の終わり
夏の稲妻 MWA最優秀ペイパーバック賞
裁きの街


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