ローリー・リンドラモンド
女性警官に限ったものは珍しい。女性ならではの悲喜こもごもなお仕事小説。
面白かった。2008年刊。
5人の、女性の制服警官が出会った事件をめぐって短編が10編。
仕事が終わった後で、犯罪という非日常的な出来事に出会った女性のまざまな心理が、繊細な筆致で書かれている。
正当防衛で射殺した犯罪者であっても命の火を消したことへの葛藤。 仕事として割り切れない、警官という職業が持っている命との係わり合いに悩む姿に、特殊な環境で生きていく重みが感じられる。
どうして私に起こったの
どうしてこんな目にあうことになったの
こういう思いを感じたことは多いだろう。
理不尽だと思われる出来事にであうことはある。
だが身近で起きることは少ない。会うことのほうが珍しいような、本来なら他人事ですむはずの犯罪現場に、立ち会わなければならない警官という職業に悩むことは、自分の人生まで、絶望や虚しさに引き込まれそうになる。
犯罪現場に立ち会うというテーマは、楽しい本ではないが、風景の叙情的な描写や、ユーモアや気の利いた構成で、一気に読んでしまった。
女同士の軋轢や上下関係のわずらわしさはどこも同じか。
作者は実際に制服警官という職業についたことがあるそうで、映画やテレビで見る警官の外観だけでなく、非常にリアルな描写で、装具備品の重さや形や細かな装着の手順まで細かく書いてあり興味深かった。
お気に入り度:★★★★☆
掲載日: