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この1冊で早わかり!日本の古典50冊: あらすじ、名場面、味わい方まで



阿刀田高

ガイドブックだけれど面白く編集されていて最後まで楽しめた。

時々思い出して古典を読んでみようかと思う。考える本も楽しむ本もいいがなぜか慌ただしい。
静かにしみじみと味わうには「古典」がいい。

ミステリや売れている本の棚から少しずれたときこの本を見つけた。それ以来、ちょっと拾い読みをするガイドブックになっている。

古典とは、長い年月にわたってその民族の評価に耐え、尊重され続けてきたものだ。しかもその寿命はとてつもなく長い
五百年、千年、二千年くらいの歴史を持つものもある

少し前から西行の生きた時代を知りたいと思い、時代背景を考えたりしていて、見つけたこの本だが、読みやすく面白かった。編集も興味深く仕上がっている。

大見出しがおもしろい。殆ど常識程度のものかもしれないが、私が初めて知ったものも多く、読んだものもある。それぞれに短いあらすじや読みどころが添えてある。いつか読む機会があるように記録した。

大見出しはこうだけれど、楽しくてわかりやすい。

〇栄枯盛衰の必然を知るための5冊
「古事記」「日本書紀」「出雲国風土記」「平家物語」「太平記」
〇たおやかな感性に触れる12冊
「万葉集」「古今和歌集」「枕草子」「新古今和歌集」「徒然草」「蕪村句集」「金槐和歌集」「おくのほそ道」など
〇波乱万丈の物語に酔いしれる12冊
まず「伊勢物語」。中の 筒井筒。能の井筒になっている
「竹取物語」より

帝は、もうかぐや姫に会えないのなら死なない薬など何になろう。といって、天に一番近いという駿河にある山の頂上で、かぐや姫にもらった不死の薬をもやしてしまった。そのため、その山を「ふじの山」といい、今でもその時の煙が雲の中に立ち上っているという。

(かぐや姫トリビア^^)など

〇日本独自のエンタテインメントに詳しくなる7冊
「梁塵秘抄」「謡曲」「風姿花伝」「絵入狂言記」「曽根崎心中「「仮名手本忠臣蔵」「東海道四谷怪談」
〇鋭い人生哲学に対峙する10冊
「方丈記」「作庭記」「喫茶養生記」「正法眼蔵随聞記」など
〇古人のビジネス感覚に学ぶ4冊
「日本永代蔵」「世間胸算用」「東海道中膝栗毛」「守貞謾稿」

〇阿刀田さんのコラム10編 から興味を引いたもの

 「花」といえば「桜」?「梅」?どちらが正解
ルックスよりもまずは「和歌」ー平安恋愛事情
平安時代の最先端科学「陰陽道」
「裏千家」と「表千家」ーそのルーツの違いはどこに? など

この一冊で早分かり! と言うように軽くうわべをなでるだけだったが仕方がない。それでもガイドブックとしてはべつに読み物として、とても面白かった。

興味があるものでは

「出雲国風土記」奈良時代に書かれた出雲神話の本拠地の伝承を紹介する地誌。
「金槐和歌集」悲劇的な最期を遂げた鎌倉将軍、源実朝の家集。(名前を知っていただけ)
「徳和歌後万載集」古典のパロディを満載した江戸時代の狂歌集。
「山陽詩鈔」詩吟で人気の高い、頼山陽が詠んだ漢詩集。
「俳風柳多留」社会を鋭く風刺した川柳を満載。なんか聞いたことがあるものが上がっていた。

役人の子はにぎにぎを能覚
役人の骨っぽいのは猪牙に乗せ
雨降りに成って出て行く雨やどり
泣き泣きもうかとはくれぬ形見分け
芭蕉翁ぼちゃんといふと立留り
韓信に意地の悪いは屁を嗅がせ

江戸時代の庶民はなかなかの教養人だったと見える。

「北越雪譜」鈴木牧之が雪国の生活を紹介した江戸時代のベストセラー。
「梁塵秘抄」後白河院が熱中した平安じだいの流行り歌。
「絵入狂言記」能と能の間に演じられるこっけいな台詞の台本集。
「作庭記」陰陽五行説に基づいた平安時代の庭つくりの秘伝書。
「喫茶養生記」鎌倉時代に、栄西が表した日本最古の茶書。
「正法眼蔵隋聞記」道元の弟子、懐奘がわかりやすくまとめた師の法語集。
「山上宗二記」山上宋二が千利休から伝授された茶の湯の秘伝書。
「和俗童子訓(女大学)」システム化した教育法を説いた貝原益軒の教育論。
「守貞謾稿」江戸時代の生活を詳しく記録した風俗百科事典

古今東西の名作には事欠かない現代でも、落ち着いたときに一文字一文字を大切に読めればいいな。


お気に入り度:★★★★☆
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