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プラナリア



山本文緒

初めて山本文緒さんを読んでみた。女性ならではの痛いところもあるが面白くて、好きになった。

初めて読む作家なので、まずは受賞作が無難だろう。280頁も頃合だし。題名もなんだか面白そうだ。
肩の凝りがほぐれるかも。
プラナリア、目も手足もないこういう形の生物は苦手だが、それじゃあ目があるからといってナメクジやでんでんむしやひるやだにやもちろんヘビトンボなどというものは気持ち悪いなと思いながら、身体分裂再生機能をもつプラナリア、どういった内容なのか興味津々で読んでみた。

プラナリア
乳がんになってまだホルモン治療を受けている。結構辛い。飲み会などで受け狙いに病気の話をすると、彼氏が悪趣味だと嫌がる。
病院で知り合った人に出会って、仕事を手伝うことになったが。”絶対自分好き”と言う女だった。

ネイキッド
店を手伝っていたが、夫よりやりすぎて離婚された。

暇、と言うものがどういう状態で、どんな感じがするものかをわたしはこの歳になって生まれてはじめて知ったように思う。退屈とはちょっと違う。退屈だったらいくらでも経験してきた

だらだらと暮らしていて、昔の部下に出会って付き合ってみた、ところが一言多くて嫌われたようだ、暇つぶしにも飽きた。
でも、来るかな電話しようかな、微妙に揺れる気持。

どこかではないここ
リストラに会った夫は再就職したが、収入が減ったので夕方からレジのパートに出ることにした。子供たちも大きくなったけれど何かと気にかかる。
義父は入院。母は一人暮らしで用もないのに電話が来る。
ああ、やりきれない環境だ、バイト仲間に誘われたホテル行きを撃退してみたりしながらも、お母さんの痛々しくも逞しく頑張る姿が少し明るい。

囚われ人のジレンマ

両者が相手の戦略を懸命に予想した結果、両者ともに損をしてしまうケースを「囚人のジレンマ」と呼ぶのだそうだ

その研究をしている大学時代の彼と結婚するつもりで付き合っていたが、彼の訳ありに気がついた。まだ決心がつかないでいると、彼のアパートに不意に母親がやって来た。
奇襲攻撃かい。
憤慨してバスに乗って帰ってしまった。

あいあるあした
離婚して居酒屋を始めた俺に会いに、娘が来た。分かれた妻は再婚している。海外にいくという娘が母親に無断で会いに来てくれた。
店に変わった娘が来て、手伝ったり手相を見たりしている。常連も出来て、何気ない付き合いがほのぼのとして暖かい。
俺と言う男をうまく書いている。

職場シリーズのような短編集だった、進んでは読まないが、主人公の心境を現実的に書き出すところは確かに受賞作だと感じた。
女について少し嫌味な部分が特にうまい。確かにそうだなぁと思うし、そういう女と付き合う男も、あるあると思わせる。
それだけに余り見たくない部分もあるが、こういう環境にいる気持ちは良く分かる。女性作家が嫌な女を書くとこうなる。
だから長く女流作家の小説やエッセイを避けてきた、そろそろ女も越えていいだろう、と思った時から、女性作家と気が会うようになった。


お気に入り度:★★★★☆
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