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リオノーラの肖像



ロバートゴダード

城壁のように硬い石組に囲まれて、うねうね続く石の境界線にはばまれて。

ゴダードの文庫本を見るたびに、この分厚くて、上下に分かれている本を読んでみたいと
思っていた。読もうというより、そのうち最後までめげずに読んでみたい、と思っていた、ずいぶん前から。

さぁどうだ、と思ってさらに5作品を買ってきた。読み始めるなら面白くなければ、といつかどこかで聞いていた「リオノーラの肖像」から読み始めた。
さすがに面白くてやめられず、夜更けまでかかり、読み終わったら目が疲れてバタンと寝てしまった。ストーリーは入り組んでいるので長く長く書いてしまいそうだし、さすがにうまく要約されている、訳者のあとがきを参考にさせてもらった。

ここに紹介する「リオノーラの肖像」はゴダードの二作目の作品。長い複雑に絡んだミステリで、物語は、リオノーラ・ギャロウェイという七十歳の女性が、その人生のほとんどをついやして解き明かした秘密を娘に語り聞かせる形式をとっている。

ハンプシャーのミアンゲイトという貴族の館で、意地の悪い義理の祖母、レディ・パワーストックに苛められながら不幸な生い立ちをしたリオノーラは、幼いころから多くの疑問を抱え込んでいた。
彼女が生まれる前に第一次大戦の激戦地ソンムで戦死したという父親のこと、父の墓はどこにあるのかさえわからない。
彼女を生んですぐに亡くなったという母親のこと。
彼女が生まれる前の第一次大戦中にミアンゲイトでおこったという殺人事件。
彼女自身の出生をめぐる謎や、ミアンゲイトにたちこめるミステリの影。
が、そうした疑問や謎にたいする答えは決して彼女に明かされることはなかった。

思いもかけず幸福な結婚のチャンスにめぐり逢い、一人の子供に恵まれたリオノーラは、そうした疑問もふくめ、不幸な過去のいっさいを記憶から消しさろうとつとめる。
ところが、義理の祖母の死後ひょっこり訪ねてきた父親の戦友と名乗る男から、リオノーラはそれらすべての疑問に答えるという長い物語を聞かされる。

それでもなお解き明かされない謎や、あらたに生じた疑問が彼女に残った、だがそのあとの何十年ものあいだに折にふれて、秘められた真実が少しずつ姿をあらわし、七十歳になった彼女のまえに、ついに全貌が明らかになる。

舞台でいうなら上手にリオノーラと娘のペネロピが話している、そこにスポットが当たったまま、舞台の後ろには厚い歴史の緞帳が幾重にも重なっていて、次々に開いていく。
それにつれて背景が変わり、それが謎を解く話につながっている、というような入り組んだストーリになっている。

しかし、それが意表を衝かれる出来事であったり、運命の導きのようであったり、人の善意が作り出した謎や、利己的な欲から生まれたものだったり、あきない話が続いていく、最後はそれが全てつながって、感動的に幕が閉じる。

長いがとても面白かった。こんなに絡ませてしまっても最後は謎が解ける。


お気に入り度:★★★★☆
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