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不思議を売る男



ジェラルディンマコーリアン

本の国から来た男の人は緑のボロ服の中にお話をまとっている、古道具に纏わるお話を手品のように取り出す。楽しくって、おかしくって時には不思議の国に一緒に行き、お客さんはその古道具が欲しくてたまらなくなる。

エイルサは心ならずも課外レポートで図書館見学をすることになった。いい子なので真面目に図書館の仕事をしていたが、そこで、汚れて擦り切れた緑の服を着た、髭面でとっても賢そうな男と知り合った。

そこから来たの?と聞くと本の国からといった。

 行くところがないらしく、つい家に連れてきてしまった。お母さんは古道具の店を構えている。男は心から嬉しそうに店を見回していたが、そうしているうちにおかあさんもつい雇ってしまう。儲けなどなくていつも支払いに頭を悩ましているのに。

エイルサが賢くて行儀がいいのは、お母さん譲りでお母さんはそのお母さん譲りなのだ。気のいいのもそうなのだ

男は一階の売り物の真鋳のベッドで寝て、いつも売り物の本を読んでいた。

珍しくお客がくると店内を見まわり、買う気がなく帰りかけるのを捕まえて、その品物に纏わる話を始める。それはわくわく胸が躍ったり、物悲しい気持ちになったり、時代も飛んだり跳ねたり行ったり来たり。聞き入ったりしてしまうほど面白い話だった。

お客はお話に出てきた古道具を嬉しそうに買って帰る。

嘘かまことか、お話はエイルサもお母さんも聞きほれるほどだった、男はフリーマーケット見学に行き、山ほどの品を仕入れてくることもある。そしてお客が来ると古道具の由来を面白おかしく、時には重々しく話す。

その男がしたお話が11編載っている。どれも引き込まれる。

そしてイエルサと男の出会いと別れがそれぞれ1編ずつ。
そして最後に男の身分が明らかになってホッと我に帰る。

一つ一つの話が絶好の短編小説のようで、読み始めると止められない、不思議な国の不思議なお伽噺が、面白くて楽しい。これはおいしいデザートに勝る、メインディッシュにもなるくらい楽しい。

佐竹美保さんの挿絵も素晴らしい、これで脳内画像が一段とアップ。広角レンズで写したような丸い世界を男が走っている、版画のような線が繊細な風景を描いている、印象的なお話がモノクロの絵なのにいつのまにか色彩豊かな世界になって連れて行かれるようだ。


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