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光の旅人



ジーンブルーワー

KーPAXという星から来たという男が収容された。精神病院の医師は彼とセッションを重ねる。KーPAXからの宇宙の眺めは美しく素晴らしいと、彼は間もなく帰るという星のことを話した。

随分前になるがこれを原作にした映画を見た。
「かっこうの巣の上で」という感動的な映画があったことを、この「光の旅人」という映画をみて想い出した、舞台が精神病院だったからかもしれないし、一人の患者がみんなを癒していくというストーリーが似ていたからかもしれない。

主演はケビン・スペイシーとジェフ・ブリッジスだった。

本屋さんで見かけて早速読んでみた。映画はもう殆ど忘れかけていたが、本を読んで、改めて自分の日常や精神状態を振り帰り、すがすがしい読後感を持った。

マッハッタンで一人の男が収容されて、パウエル医師のいる精神病院に回されてきた。
彼は琴座にあるK-PAXという惑星から来たという。
さまざまな身体的な検査にはまったく異常がなかったが、ただ可視光線感知に異常な能力があり正常な人間を越えた視力が認められた。眩しいのか常にサングラスをかけている。

彼とのセッションで、パウエル医師は様々なことを知ることになる。
自分をプルートと名乗る男はK-PAXの生活を細かく話すことが出来、K-PAXから見た宇宙銀河系の地図を描いて見せた。それは友人の宇宙学者も驚くほど正確なものだった。

パウエルは彼が宇宙から来たということは、はなから信じられない、病名をつければサヴァン症候群だろうか、ついには多重人格ではないだろうかと疑う。人柄を知って親しみを感じるようにもなるが、彼が語る星の生活を聞くと、なぜか自分のこれまでや父親の影響で精神科の医師になったいきさつなども振り返りたくなる。

プルートの周りには患者が集まりだす。人に対して恐怖感にとらわれていた患者が、今まで避けていたことに興味を示したり、硬い表情が和らいでくる。彼は何か癒しの力があるのだろうか。

8月17日には星に帰るというプルートの周りを、連れて行って欲しいという患者が取り巻くようになった。

パウエル医師は、彼が帰るというその期日までにあとわずかなセッションで正体を解明できるだろうか。

8月17日、プルートは人類に関する報告書を書き上げて消えた。
医師はプルートの過去と不思議な現在の出来事に立ち会うことになる。

「ときには、真実は辛いものだからね。ときおり、わたしたちには、もっとよい真実を信じる必要があるんです」
「真実よりさらにいい真実があるってどういうことさ?」
「もっとよい形態の真実があるかもしれないってことですね」

「たったひとつの真実しかない。真実はぜったい的なものだ、それから逃れることはできない、どんなに遠くまで走ってもね」と彼は言ったが、それはどちらかといえば、私には彼の願望のように聞こえた。
「他の局面もありますよ」
私は異論を述べた。
「私たちの信仰は、不完全で矛盾した経験にもとづいています。ですから、そうした問題を解決する手助けを必要としているんですよたぶん、あなたは私たちの力になれるかもしれませんね」

作者は科学の研究、特に細胞分裂の研究に携わった人だそうで、生化学の知識が生んだこの作品は、ストーリーの意外さに違和感がなく、プロートの異星人だという目から見た人間というものにも興味を引かれる。

暖かい読後感に包まれてすぐに読み終わった。
映画もよく作られていたことを思い出した。


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