辻村深月
珍しく二度読んだ。
本を読むことは本当に面白いと思った。
本を読むことは本当に面白いと思った。
どらえもんの道具がでてくる。子供向きのマンガ、アニメだと思っていたものが次第にそれだけではなくて、物語を意味の深いものにしていた。
ドラえもんの出す道具が、ストーリーにぴったり嵌っていくのは巧みで面白い。
ドラえもんの出す道具が、ストーリーにぴったり嵌っていくのは巧みで面白い。
それは、亡くなった父とその娘が親しんできた世界が今も共有されている証にもなっている。
理帆子は父を亡くし、母は治る見込みのない癌に侵されて死を待っている。そんな環境の独り暮らしの高校生で、作者はそれを、題名の示すように氷に閉じ込められて、空気穴を見つけられず苦しんでいるくじらに例えている。
そして彼女に写真のモデルになってくれといって近付いて来る高校三年生の別所と言う学生も、親しくなるにつれ、彼もまた冷たい海の中で暮らしているのが解ってくる。
だが、彼の飄々とした環境の受けとめ方に触れ続けていると、いつか理帆子も氷の割れ目から広い未来を見つけることができそうだという、いい終わり方だった。
付き合っていた若尾と言う青年が「カワイソメダル」をぶら下げているのに気がつく。彼は常に失敗を他人のせいにして逃げている、プライドを守ることだけを生きがいにしていることに、理帆子が気づいて離れていった時、彼は自滅する。そういった生き方を絡めて、ドラえもんの道具を使った作者の慧眼は、ドラえもん好きからこういう物語が出来たのかと思いながら、新しい目がドラエモンにも向いて開いた。
お気に入り度:★★★★☆
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