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音もなく少女は



ボストンテラン

子供を産んで育てることがむつかしい時代になってきている。母性が本能とは別な道を歩き始めたのだろうか。ペットや家族愛のドラマを見て、やくざが泣いているシーンは喜劇でしかなくなったのだろうか。

ブルックリンの極貧家庭に生まれた、耳の不自由な少女イヴが勇気のある女たちに守られ成長していく物語。

母のクラリッサは、耳が聞こえないという障害を持つイヴを、将来味わうだろう人生の荒廃から救うために、教育を受けさせようとする。
そこで教会で顔見知りになっただけのフランに相談する。

イヴを育てることでクラリッサとフランは親友になる。

フランには過酷な過去があった。
彼女の愛した青年も耳が不自由だった。
フランの両親は傷害のある子供たちを教育する私立学校を経営していた。
そこに彼は入学していた。
家系に障害のある子供がいると、優生保護のために断種手術を受けなくてはならなかった。
彼女は青年と逃げるが、子宮を摘出され、恋人は射殺された。
その後、彼女は一人小さな店を持って暮らしていた。

三人の女性が、運命と卑劣な男たちに翻弄されながら勇気を持って生き抜くものがたり。

文章は繊細でダイナミック、時には詩的で、上質な文学的な香りを持っている。

彼女たちが、過酷な出来事に打ちのめされながらも、立ち上がるたびに、読んでいても何度か胸が一杯になる。

ストーリーを思い出しながら、もって生まれたイヴの障害について母親がとった手段や、フランを襲う過酷な社会通念や国の方策について考えてみた。
優性保護については、今でも法以外では解決されているとは言えない。法的に問題がないとしても、子供の誕生について親の根源的な愛情を計ることはできない。

アメリカの一女性が提唱した優性保護のあり方をWikiで調べてみた。深い学問的な理論はわからないながら、人の生きる権利、産むことの自由を強制的に定めることは、産み育てる苦しみよりも育てることができない苦しみも様々な形を含めて深いのだと言える。

今なら宇宙論かと思える意見を見つけた。

「遺伝的に不適当な」人物をターゲットとして優生学者がすすめた社会的介入法としては、選択的な生殖、断種、安楽死が含まれた。例えば1932年にサンガーは、「悪い家系」を断つための断種と隔離を行う「強固なポリシー」について触れている。

20世紀初めのアメリカ合衆国では、サンガーも強力に押し進めていたこの優生学運動は強い影響力を得た。アメリカの優生学者の努力の結果、何万人単位で断種が行われたり、コロニーに強制隔離される人が出たりしたほどの力があった」

「大家族の子供に対してできる最も慈悲深いことは、殺すことである」
「(黒人)は遺伝的に劣った人種である」「人間の雑草(黒人・移民・障碍者など)を駆除しなければならない「向こう見ずに繁殖する者たち、、、子供をうじゃうじゃと産みつける、、、決して産まれるべきでなかった人々がいる」

Wikipediaより


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