キース・ピータースン
芹澤恵
ウェルズの記者魂に触れる。シリーズ三作目。
使っている情報屋のケンドリックから、上院戦に立候補中の議員のSM写真を買わないかと連絡がきた。しかしウェルズは議員のプライバシーに興味はないというので、断った。
写真はライバル紙の「タイムズ」に使われて、スクープになる。
ケンドリックが殺された。
スクープを取れる写真を買わなかったのは「スター社」のウェルズだったらしいと世間に知れ渡る。
編集長は社会面より、売れるゴシップ記事を読ませる「身近な新聞」を目指していて、ウェルズとは相容れない間柄だった。
彼は仕事に対する自分の信念と、絡まって起きた事件の間で、進退窮まり、殺人犯を突き止めるために動き出さなくてはならない。
まず現在行方の知れなくなった、写真の女から探し始める。
調べを進めているうちに、スターになるために田舎から出てきて、上流階級の紳士たちの夜のために提供された、と思われる女優志望の女が見つかる。
過去、その女の田舎で、一時の気まぐれに付き合ったことで、婚約の儀式だったと思い込んだ牧師見習いの男も見つかる。
それは今回の事件とどう繋がっているのか。彼には少しずつ見えてくる。
背景の暑い夏が読むだけで汗ばみそうな季節である。
選挙がらみではあるが、底辺に生きる人々の、希望や悲しみをにじませたストーリーになっている。
ゴシップ記事を売ろうとする上司にあくまで硬派を貫こうとするウェルズの姿勢が考えさせられる。
これはMWA優秀ペイパーバック賞を受けているが、私は二作目(幻の終わり)の方がいいように感じた。好みだけれど。
諄々と語りかけるような作品は、読みながら様々な感情が湧いてくる。少し古い作品だが、なじみになった世界を訪れるのは嬉しい。
お気に入り度:★★★★☆
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