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武士道シックスティーン (文春文庫)



誉田哲也

今頃読んでみる。マンガにもなり映画にもなっているような人気作品ですっかりイメージが出来上がっている、安心して読み出した。
こういう世界は久し振りで、一緒に熱血してしまった。

高校生、16歳、磯山香織。「五輪書」を手放さない剣道少女。頭の中はいつも剣道で一杯。

市民大会の決勝戦で負けた、そのときの相手の動きが不思議で仕方がない。

ここから、高校で再会した甲山(西荻)早苗との長い付き合いが始まる。古武士の風格まで持つ浮世離れのした剣士と、一方はちょっと浮いた感じの天然少女、それが目標は同じ剣道。この二人のずれた感覚が、何かと面白い。

影響しあいながらの三年間で、敵愾心が友情に代わるところ、ストーリーに乗せられて、ほろっとしたり、ジンとしたり、興奮したり忙しい読書だった。

余り知らない剣道の試合の形、練習マニュアルなどが身近になった。二人を取り巻く剣道部のメンバーがそれぞれ個性的で、爽やかでいい。部長や副部長の人柄も、脇の部員たちも、丁度いい緩衝材で、二人の生活に関わってくる、試合になると、個性の違いが際立つところも楽しみつつ勝敗が気になって力が入る。
三年生が卒業して新体制になってから、新しい雰囲気になるところも生き生きとして新鮮だった。
親しんだ先輩が卒業したり、新入生を迎えたり、学校の部活にはこういう出会いや別れがあったなぁと懐かしい。

磯山香織の言う「負けることは斬られること」彼女らしく全身でぶつかっているのが伝わってくる。

時代小説を読むと、道場の代表が、御前試合に出る。
息詰るような前半の山場だが、その二人が長い遺恨を残したり、友情を深めたり、後の物語に発展する。

まさに負けることが斬られること。真剣な求道心はこういうもののように思った。

二人の成長譚、青春時代を象徴するような数々のエピソードを含めて、爽やかで、読後感のいい話だった。


お気に入り度:★★★★☆
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