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灯台守の話



ジャネットウィンターソン

生きることは物語ることで救われる、、、これが彼女を支えてきた。

私(シルバー)はスコットランの北ソルツの崖に斜めに突き刺さった家で生まれた。なにもかも傾いていて、母親と綱で結び合っていた。
しかし母が、滑って崖から落ちて、繋いでいた綱を切り独りで死んだのでシルバーは生き残り孤児になってしまった。
養父は、1802年に建設が始まり1828年に完成した灯台にすんでいる灯台守(ピユー)だった。

光が仕事なのに、わたしたちの暮らしは闇の中だった。光はけっして絶やしてはならなかったけれど、それ以外のものを照らす必要はなかった。あらゆるものに闇がつきまとっていた。時化帽をかぶれば、つばが顔に黒い陰をおとした。ピユーがありあわせのトタンでこしらえてくれた小さな風呂場で、わたしは闇に中で立ったまま体を洗った。引き出しの中に手を入れれば、スプーンよりも先に指に触れるものは闇だった。<強力サムソン>の入った紅茶を取ろうと戸棚を開ければ、茶葉よりも黒々とした穴が口を開けた。

シンボリックな一節だ。

こうして、ピューから聞かされる昔語りは、灯台の歴史であったり、それを作ったダーク一族の100年にわたる物語だっりした。
灯台は要らなくなって火が消えた。

ピューに別れを告げて20年後、シルバーはまた灯台を訪れた。

ストーリーは、灯台の日常、ピューの話されるダークの奇怪な生活のことなどが重なり合い、灯台で暮らしていた間シルバーは言葉の中に現れる海に漂っていた。
さまざまな巧みに挿入されたエピソードも興味深い。

実に奇妙な構成の物語だが、それぞれが齟齬なく重なり合い複合した中から、シルバーの強靭で孤独な生き方が見える。

作者も孤児で各所を転々として育ったそうだ、ハーバードに入り、物語を書いた。
生きることは物語ることで救われる、、、これが彼女を支えてきた。


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