黄昏に眠る秋 ヨハンテリオン 三角 和代
カリブ海の島で子供がいなくなった。20年後に靴が入った小さな郵便が届く。
新人賞受賞のスウェーデンの作家。読み始めは文体に馴染めないで中々進まなかった。
カリブ海側のエーランド島で起きた子供の誘拐事件。
祖母は昼寝をしている間に、一人で散歩に出た孫のことを悔やんで死んだ。
母親や祖父母は、事件から立ち直れていなくて、夫婦は離婚、 事件から20年、80歳になった祖父のイェルロフは、動きもままならない状態で、介護施設にいる。
祖父は、孫息子がいなくなったことを考え続けている。
そこに、小さな靴が郵便で届く。
母のユリヤはそれがいなくなった息子の靴だという。
島は昔の海運業も寂れ、住む人もまばらになっている。夏の間は避暑に来る人で一時別荘地帯はにぎわうが、それも短い夏が過ぎると人影も見えなくなる。
島の北部に広大な土地を持っているカント家にはニルス・カントという問題児がいて、島では鼻つまみ者だった。
暴行罪で捕まったとき、警官を護送中に射殺して、海外に逃げてしまっていた。
イェルロフの推理と、昔馴染みの島の人たちの係わり合いは、孫の靴が届いた時から動き出す。
彼は歴史の中で生きてきたが、まだ体は動く。
ニルス・カントの逃亡生活や島に残った人たちの暮らし方も、丁寧に記述され、二重三重のストーリーになって厚みがある。
戦後、変ってしまった島の中で細々と生きる人たちを不自由な体で尋ねて歩くイェルロフは、ついに命がけで真相にたどり着く。
半ば過ぎから急にテンポが良くなり、
書きたいけれど 書けない、思いがけない展開が、非常に面白かった。
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