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まるで天使のような (創元推理文庫)



マーガレット・ミラー

人里離れた山の中に隠れた宗教団体があった。文無しになったジョーは、自給自足で排他的なその集団に迷い込んだが。

マーガレット・ミラーは「ミランダ殺し」に続いて二冊目。
先に「半身」を読もうとして探したが見つからなかったので、これを読んでみた。

最初は随分淡々とした流れで、静かなミステリという印象だった。

最近読んだ特捜部Qもこの作品も、新興宗教団体の話で、北欧もアメリカも、同じように人は宗教に救いを求めているのか。平和であってもなくても心の波立ちを鎮めるには祈りと実践なのだろうかと、形は変わってもこういう生活があることを実感しながら読んだ。

主人公は元私立探偵のジョー・クインという。
ギャンブルで文無しになりヒッチハイクをしていて山の住人に拾われた。山の中には、塔があり、孤立している宗教団体があった、中には30人に満たない人々が自給自足の生活をしている。そこで一夜の宿と食事を求める。

信者の元看護師「救済の祝福の修道女」から120ドルでオゴーマンという男について密かに調べるように頼まれる。

隔離され、所持品も制限されている中で、なぜ120ドルを隠し持っていたのか、なぜ男の安否が気になるのか、クインはこの謎を解いてみたいと思った。

150キロほど下りた小さな町でオゴーマンという男の足取りを調べ始める。皆が知り合いという変化のない生活を続けてきた人々は噂話に事欠かない。
だが深く入り込んでみると、車の事故の後で姿を消したオゴーマンをまだ探し続ける妻、週刊誌を出している情報源のジョン。不動産会社社長のジョージ、横領を続けていて今は服役中のその妹、いわくありげな美人の共同経営者、過保護な母親と息子、目立った住人の数は少ないが、それぞれ充分何かいわくありげだ。そんな噂は残っていても、オゴーマンはどこにも居ない、消えてしまっている。

そして修道女に犯人から手紙が来てオゴーマンが5年前に死んでいることが分かる。

さらに修道女が毒殺され、新入りの信者が塔の最上階から飛び降り自殺、凄惨な出来事が続きだす。それを手掛かりに捜索の方向が見え始める。

そして、ついに最後の三行で明かされる真実が驚きと悲哀を残し、これこそマーガレット・ミラーらしく全ての話が繋がる。

手がかりを追ううちに、人々の裏の顔も見え、ふと立ち寄った町ではあるが、深いつながりも生まれクインの人生観も変わっていく。

気楽なギャンブラーだった男が人々のふれあいとともに心境が変化していく様子や、宗教団体が崩壊する有様など、人の生き方が運命的であればあるほど、それを変えさせる出来事が、偶然に、不意に、訪れることを素直に時間を追っていく方法で書いている。古い地域の濃い人のつながりを良くも悪くも興味深く読んだ。

読みやすい新訳だったのはラッキーだった。


お気に入り度:★★★★☆
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