隣の部屋に河崎が住んでいた。
ディランの歌をきっかけに言葉を交わし、突然本屋を襲う片棒を担がされることになる。
それが現在の話。
並行して二年前の出来事と、交互に話が進んでいく。
二年前は、ブータンからの留学生ドルジとペットショップの店員琴美が付き合っていた。
河崎はドルジに日本語を教えていた。
その頃(二年前)ペット殺しが発生する。公園で犯人グループを見たドルジと琴美は彼らに狙われるようになる。
琴美は犯人をつかまえようとして、危険な道を走り出す。
椎名は河崎言うところの、本屋襲撃(広辞苑を盗むこと)の共犯になり、予定通り「広辞苑」を盗んだがそれは「広辞林」だった。
暖かくスリルがあり、テンポもいい。
先に見た映画(DVD)では
河崎に瑛太、椎名に濱田岳。ドルジと琴美は知らない俳優で、ペットショップの店長が大塚寧々。
キャストはこれでイメージが固まった。先に映画を見ておくとストーリーがわかりやすい。
現在と二年前が並行して進む設定は斬新で、謎の部分が最後にすらすらと解けていくのがまさに雲ひとつない晴天に出会ったように文章は爽快、気の利いた会話と悲劇的なストーリーもすばらしい。
伊坂さんは「重力ピエロ」の人、という強い印象があって。冒頭の「春が二階からおちて来た」というひとことで俯瞰できそうな展開、いつか兄弟の重力のなくなった家族関係に嵌り、これだけでもう伊坂さんを読んだことにして今に至っているが。
改めて伊坂さんを調べてみると有名なものも読んでない。
気が付くと先が見えないほど無駄に高い本の闇に取り囲まれているし。
その上性格もあって急ぐあまり読んだものも書いてなくて、改めてしっかり記録を残さないとと思うと、再読沼に落ちそうになる。
つい読む時間に追われ記録から目をそらしてしまう。昔から読み手で来て書き手ではないことを痛感。
「重力ピエロ」と「オーデュポンの祈り」のような世界に伊坂さんを縛り付けているようで、成長する作家のその跡を追っていない。
読んだ初期のもの
重力ピエロ
アヒルと鴨のコインロッカー
陽気なギャングが地球を回す
オーデュポンの祈り
ほっこりミステリー
死神の精度
陽気なギャングの日常と襲撃
好きな本がそばで積み重なって崩れそうになっていれば、支え程度でもヨマネバ、書かねばという嘆き節。