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スノーマン 上



ジョーネスボ

ノルウェー発。猟奇的な連続殺人あり、刑事の活躍ありのミステリの定型のようだが、雪だるまを使うところなどさすがに心身ともに凍りつくような冬の事件だった。

「スノーマン 上下」

友人のススメで、ノルウェーのミステリを読んだ。
まず、ジョーネスボのデビュー作「ザ・バット」から「ネメシス」「スノーマン」と続けて三作。

「ザ・バット」はハリー・ホーレ刑事シリーズの第一作。二年に一作のペースで発表している人気シリーズだそうだが、これは10作目。 1作目、3作目、4作目と作品が翻訳されているが、シリーズなのに続けて出ていない。
「スノーマン」でもすでに同僚がなくなっているがそのあたりのいきさつは良く分からない。売れそうなものを選んで出版しているのだろうか。仕方がないが話はつながるので、昨夜読み終わったので新鮮なうちにメモをしておこう。

だが、どの作品も最近読んだものの中では話の作りが重層であり、その分登場人物も多く、世相も反映され事件の解決までの、時間の流れもあきさせない構成だった。

ノルウェーという国を理解する上で少しの手がかりを得ることも出来た。
北欧のミステリは面白い。といっても人気作家全てに通じているとは全くいえないけれど、社会を反映して地域と結びついた作品が多い。共通してさえない刑事が活躍するのも特徴なのかな。
デンマークの「ユッシ・エーズラ・オールスン」の「特捜部Q] スウェーデンの「ヘニング・マンケル」「スティーグ・ラーソン」アイスランドの「インドリダソン」、「刑事マルティン・べック」など。

まずオスロの雪の日、女性が失踪した。雪だるまの首にその女性のスカーフがまかれていた。
ハリー・ホーレは調べていくうちに、不審な失踪事件が多いことに気がつく。ベルゲン署から来たカトリーネ・ブラッドを相棒にして調べ始める。

彼の元に、スノーマンという書名のある手紙が来た。

失踪した女性の死体が次々に見つかり始め、連続殺人として捜査を始める。現場には雪だるまが置かれていた。

ハリーはアルコール依存症の過去があり立ち直ろうとしている。殺人事件を解決するのに一人で捜査するのを好み、同僚ともあまり馴染まない。だが、過去に協力して事件を解決した仲間からは、内面の温かさから今でも親しまれて協力されることが多い。

過去に別れた女性がいてまだそれを引きずっている。息子からは慕われる典型的なヒーロー型の刑事で、憎めない。
相棒のブラッドはややエキセントリックであり、彼女は謎が多く、ハリーは何か割り切れない気持ちを持っている。
だが事件の謎はカトリーネ・ブラッドから解けていく。

殺人方法は猟奇的で残酷、快楽殺人のようで何か深い意味も感じさせる。ハリーは核心に迫ったと思えたが巧妙な犯人の罠だったり、わき道を探し続けていて、振り回されたり困難をきわめている。彼女までも狙われ、自分も射程に入っているのに気がつく。
犯人探しもありながら、殺された女性たちの生活も挿入され、それがじわじわと核心に近づいていく語り口は、非常に巧妙で面白い。
前半は、事件の経緯や、現場の血なまぐさい描写でいささかリズム感にかけるが、一つの山を越えてからの犯人との対決のくだりは、一気に解決に向かい、読むスピードも上がる。

主人公の人生観なども加えたミステリではない、だが事件を捜査するというスリルと、作者任せではあるが謎解きの過程で浮かび上がってくる犯人の殺人動機が、手段の奇怪さに比べて人間的であり、ハリーの捨て身の捜査にも力が入る。

エンタメ作品なので、出版作が全て翻訳されているわけではないのがちょっと淋しいが、人気作だけを読ませるのも出版業としては仕方がないことかも知れない。


お気に入り度:★★★★☆
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