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陽気なギャングが地球を回す



伊坂幸太郎

銀行強盗なのですが、愛すべきメンバーで、実害がない分応援態勢で読んだ。ガンバレ四人組 m(__)m

伊阪さんの作品は「死神の精度」もそうだが、ピリッと気の利いた反面とぼけたところもある面白い短編集が好きだ。
読後の安心感と、お得感がある。
文章(会話)もおしゃれで、ウイットもユーモアも、テンポもキレもいい。
スピードも緊張感もある。
深刻な世界観を様々な形にくるんで、時々は幻想的な風景に紛らせて作り上げてくれる。
好き度マッハな作家に入れている。

楽しいという「面白い」もあるが、これには文章や内容、設定人物が興味深いという面白要素が多分にある。
主人公たちは実際ならアウトロー。泥棒だから。それも銀行強盗が主。
フランス映画の名作「地下室のメロディー」のように、ちゃんと綿密な下調べをして計画的に実行する。
「地下室のメロディー」に習ったわけではないが、今回はさっそくやらかして、せっかくの獲物をかすめ獲られてしまうが。

4人組だがそれぞれ特技がある。一人は真面目な公務員で、相手の考えが即座に読めて嘘を見わける。もう一人彼の同級生の仲間は、喫茶店主で演説が巧い(と本人は思っている)機会があれば一席でも二席でもぶちたい、特技は時間きっかりに終わらせることができること。この襲撃中にも、得意満面、欣喜雀躍という体で銀行のカウンターに上がって喋り始め、仲間が仕事を終わる4分きっかりで終わる。自信満々でハチャメチャな演説がまた実に可笑しい。
次は正確な体内時計を持っている女性。だから逃走ルートを走って行けば予定通り赤信号にもかからないで爆走することができる。
最後の青年はスリの名手で、テクは神業に近く、日ごろは動物をこよなく愛し(人間よりも)盗んだ金はニュージーランドで羊と過ごすために使う。

だがなんと、無事盗んだ金をバッグにつめて逃げていたら、横からフイに出てきた車にあたり、しっかり上前をはねられというか全額盗られて大失敗。
盗まれた金を取り戻そうと復讐心に燃える、というお話でした。

それぞれ癖がある愛すべき人物たちが実は泥棒集団で、それでも表向きは真面目に生活をしている。
このギャップにいい味がある。
泥棒たちが主人公で、警察は出てこない、あくまで計画的な物盗りを余技にする4人組の話は、面白おかしく展開していく。

肩の凝らない、楽しい話を読もうかなと思って古い山から掘り出した。

コレは映画にもなって
ボスの公務員は大沢たかお、喫茶店主は佐藤浩市、体内時計の女性は鈴木京香、羊君は松田翔太で、結構豪華キャスト。だったらしい。若い。


お気に入り度:★★★★☆
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