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テロリストのパラソル



藤原伊織

藤原伊織さんは若くして突然に亡くなったが、この作品は江戸川乱歩賞と直木賞を同時受賞をして話題になった。

私はこの作品も好きだが、「シリウスの道」「ひまわりの祝祭」「手のひらの闇」などに夢中になった。もう次が読めないのが残念。

特に「シリウスの道」は広告業界の内部が興味深く、ドラマにもなったので頼んで録画してもらったのだが、期待していた緊迫した山場がカットされていて薄味だった。

でもやはり「テロリストのパラソル」
1996年に放送されたそうだが見たくなったら探せば見ることができる。読んでから16年もたったのに、時代の流れもあまり影響がなくとてもよくできていた。

いい時代になってもので、余談だが、ついでに恐怖映画「顔のない目」まで出てきて懐かしく恐ろしかった。

ドラマの話だけれど。いいでしょうか。

最初の新宿中央広場の爆弾事件から始まる部分は非常に面白く、読んだころの記憶と重なるドラマティックな出だしだった。

学生運動の同士で友人だった三人のその後。二人は警察に追われ、逃げ続けて20年後に再会する。

生活の陰に隠れて、薄暗いスナックで生きている男が、爆発事件で存在があらわになる。しばらく同棲したことのあるかっての同士だった女性がこの日に爆発で死に、友人だった男の名前も挙がる。

あまりの偶然に、20年の間知ることもなかった二人の過去を調べ始める。

スナックにかくれて生きているアル中の男が萩原健一、かって同士だった男に根津甚八、恋人だった女性が高橋恵子、そのほか西岡徳馬、大杉漣 など。若い木村佳乃も。

あまりべたべたしない演出や脚本もよかった。監督の気持ちが入りすぎて、見ているほうが押されそうな意欲作もたまにはいいが疲れる。
内容は重いが、それぞれの生き方が物悲しい、いい作品だった。

藤原さんの作品のジャンルは「ハードボイルド」らしい。

なんだか過ぎた時代を感じさせる作品で、懐かしかった。

スナックでショーケンが作るホットドッグはこの後うちでも作るようになった。カレー粉で味付けしたキャベツ炒めの上にホットドッグを挟んただけ。芥子味の素朴な味が休日には案外受けている。

洪水のようにあふれる本の海で、もうあまり見なくなった伊織さん。ドラマを通してでも書いておかないと忘れる。


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