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夜の記憶



トマス・H.クック

いつでも自殺できる用意をして暮らしている、ミステリ作家ポールの記憶。

13歳の時に姉を殺された悲惨な体験が書くことの核になってしまっている。 今でもそのトラウマに悩まされている。

そこにまことに奇妙な依頼がくる。50年も前に殺されたある少女の事件の真相を推理してほしいと言うのだ。
かつてはその土地の富豪であった家の女主人に、美しい邸宅「リバーウッド」に招かれ、同時に来ていた劇作家の女性とともに考え始める。
世捨て人のような暮らしから出て行くつもりもなく、あまり気乗りはしなかったのだが、その女性に引かれて次第にのめりこんでいく。

ここにも理不尽に殺された無垢な少女がいて、みんなから愛されていただけにその死は不可解であった。

同時進行する物語がある。ポールが書いている小説の、シリーズに登場する刑事と殺人鬼が、人格を持った分身のように加わって、現れては彼を悩ます。時々蘇る記憶の描写が次第に明確になっていくところなどは素晴らしい。

その想像力で謎を解いてほしいと望まれただけあって、周りの人たちに会えばみんな動機を持っているように思われ怪しい。事実、何か暗い影がすべての人々には付きまとっている。

となかなか込み入った作りになっている。 少し見当が付くところもあるが、話に厚みもあり面白かった。


お気に入り度:★★★★☆
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