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ハーレムの闘う本屋



ヴォーンダ・ミショー・ネルソン

20世紀初頭、ニューヨークのスラム街に黒人専門の書店が誕生した。

黒人はスラム街に住んでいるということだけで、肌の色が黒いというだけで差別されてきた。
アメリカは20世紀当時もまだ白人の物だった。

9人兄弟を父親は魚売りで育てた。だが父とルイスだけよく似ていた。ルイスは盗みで捕まった時、盗みについて、恐れ気もなく裁判官に言う「白人はインデアンから国を盗みアフリカから黒人を盗み奴隷にした」

父親は歴史を見ることができた、黒人のための機関や施設を増やさないといけない。教育を受けなくてはならない。その言葉はルイスに受け継がれた。
民族としての黒人、アメリカ国民としての黒人、しかし白人に比べてないものが多すぎる。

兄ライトフットは母の信仰を受け継いで牧師になった。ルイスにも神の道を歩んでほしかった。だがルイスの生き方は違っていた。
黒人の牧師は行動することで彼の思想を広めていった。

ルイスはギャンブルに目を付けて盗んだ金で店を開いた。繁盛したが警察に捕まり抵抗して片目を失った。

ルイスは兄の教会で働き始めたが違和感があった。天国を目指す前に現実を知らなくてはならない。
大学で学ぶのは白人社会の知識だ。しかし奴隷制度についての知識だけ学んだくらいでは人間としての真の尊厳を学んではいない。黒人は知らなくてはならない。学ばなくてならない。知識は頭や心の中にある、そして本の中にある。本というものを知って読まないといけない。

彼は兄の宗教活動を手伝いながら、もっと広くこの世の問題の多くを見る必要を感じた。

42歳で教会を出た。黒人がなぜ抑圧されてきたのか、それを社会のせいにしてきた。だが、黒人は正しく認められなくてはならない。人として。

兄が閉めようとした事務所は本屋にうってつけだ。
どこの本屋にでも売っているような本のことではない。黒人のために黒人が書いたアメリカだけでなく世界中の黒人について書かれている本だ。「いわゆるニグロ」たちは世の黒人男女が発する声を聞き学ぶ必要がある。ここはうってつけだ「私の本屋に」

兄は本屋のことは理解できたがギャンブルのように見えるルイスの将来が不安だった。
それでも開店資金を出し、ルイスは理解者から5冊の本を手にいれ100ドルの金で開店した。

手押し車に本を載せて売って歩いていた。「よってらっしゃい見てらっしゃい」ルイスは呼び込みをした。

通信販売も滑り出しがよく蔵書は少しずつ増えて行った。

ルイスは店に来る人を拒まなかった、読みたい本があれば店で読ませ、質問には答え教授と呼ばれるようになった。

ルイス・ミショーは本のこと、そして、本の販売のことに詳しかった。しかも、その知識を熱心に教えてくれた。やや自信過剰気味ではあるが魅力的な人物で、彼の書店、ナショナル、メモリアル・アフリカン・ブックストアは貴重な文献の宝庫だ

でたらめの記事を書かれ悪意にもさらされ、黒人が集まるというのでFBIにも目を付けられていた。

やがて黒人作家や活動家も本を読みに来た。そこで少年が育ち、詩人になった。

公民権運動のさなか、店で読書に没頭していたマルコムXが暗殺された。続いてバス・ボイコット運動のキング牧師が暗殺された。偉大な指導者の名前は残っているが、それに参加した多くの市民は名もなく悲惨な犠牲者も多かった。その人たちに公民権が認められ人種差別は表面的には法で退けられ、人の尊厳は守られることになった。

一粒の種をまくにもつよい意思と努力がいる。それを理解して協力する人がある。

差別・区別することから逃れることがないのは人間本能の負い目だと思う。それを超えるヒントの一部はがこの本にある。


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