和子(別名ホリニンナ)は隣家なので駅までの道で玄関から出てきた「ミミズ」を追い越した。
置いておいた自転車を「ミミズ」に盗られ、ついでに忘れていた携帯電話も盗まれる。
逃亡中の「ミミズ」から電話がかかるが、なぜか警察には協力しないでいいかもと思ってしまう。
それが発端になって、携帯電話に登録していた友達も自然な成り行きでミミズとのつながりが出来てしまう。
今時の軽く集まった若い四人の仲間は殺人犯にかかわるということに興味をもって、「ミミズ」の逃亡にまき込まれていく。
「取り返しのつかないこと」というキーワードが出てくる。
前もって知って解決していくということは、平凡な人間の限界であって、簡単に出来ることではない。
だから「取り返しがつかない」ということだという。
時間は止まらない、過去はやり直せない。
不完全な、人という者は、それらを未解決のままで見つめていくしかないことが、彼女たちに次第に分ってくる。今のままでは。
成長の過程で、社会とのかかわりが自分の中でこなれていない時代で、彼女たちはまさに成長途中だった。
生きていくには、平行して付いてくる暗い部分も認めるのが日常というものだと思うが、それらと共存していく、支障なく付き合っていく、うまくかわす、良くも悪くもこういった知恵を現実に使えるようになることが大人になっていくということだろう。
高校生の彼女たちは、都合よく群れてはいるがそれぞれ友達にも話せない自分だけの世界がある、この世界をリアルに残酷に書き出すところが桐野さんの宝刀かも。
それがこの事件で「ミミズ」との関わり方が四人それぞれの違う所。
そこから、心の奥にある友人関係とは別の個性がはっきりと自覚されてくる。友達関係がこれを起点に崩れていく。この関係は見える部分だけで繋がっていたのではないかとそれぞれがやっと気が付く。
そしてついに一人は深い自己分析の中で、「取り返しの付かないこと」で解決する方法を選ぶ。
「取り返しの付かないこと」に気づくことは、残念ながら後出しじゃんけんになることが多い。
現実に生きていることで、人生はそれに気づかなかったり、気が付いても次第に忘れたり、諦めたりしながら折り合いをつけている。
「取り返しのつかないこと」が起きて明らかに重い罪を感じたこの4人の少女たちの異なった生き方が、未熟な現実を見せてくれている。
少女の成長過程を実にうまく描いていて桐野さんの作品を読むのは「ダーク」で終わらそうと思ったことを改めなくてはいけない。