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二流小説家 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕



デイヴィッド・ゴードン

これは面白かった。本筋とは別にジャンルを超えて幾重にも、マトリョーシカのように話が組込まれている。調べてみるとなんと、とっくに読まれている大評判のものだった。やっぱりどこからか今頃?という声が……

語り手(ハリー・ブロック)は、ミステリ、ポルノ、ヴァンパイア小説、SFなどを生活のために書いてきた、それでやっと糊口をしのいでいる冴えない中年作家。ジャンルが変われば名前も変えなくてはいけない。それぞれの本に貼る肖像写真を苦し紛れにあの手この手で、母親の写真まで細工して作り出すところがおかしい。

アルバイトに高校生の家庭教師までしている。できない子供には馬鹿にされるが、できる生徒はマネージャーができるほどに優秀でハリーに何かと助言をして、教える立場ながら教えられることが多いという自虐味たっぷりの一人称。

そこに80日後に死刑になる連続殺人鬼から、(彼は殺した女を写真に撮り警察に送り付けていた)要求に合格すれば告白本を書いて欲しいと依頼が来る。

迷った末にベストセラー作家を夢見て(結局は折れて)書くことを引き受け面会に行くが、殺人犯は知的で狡猾だった。

訳のせいか、作者のせいかとても読みやすく難解なところはない。それでいて、ハリーが今までに書いた作品(別人を装うためジャンルごとにストーリーに合わせて文体を作っている )の引用や、作者の生き方、思想、文学論もありコレがまた恐れ入るほど面白い。このバックインバック的(ハンドバックに入れる小物整理用バックです笑)物語がこれを読むだけでも作者の才能がわかるくらい。

この作者もミステリ好きで(そう書いている)、名の知れた探偵や刑事が織り込まれていて、ひょんなところで知ったお名前にお会いして、と言う具合で、読者サービスもちょっと嬉しい。

さすがポルノ小説を書いていることでもあり、話の中には露骨なシーンや言葉も出て映画化するならきっと15R。

ただ、ミステリには(ほとんど)始めがあって終わりがある。型どおり犯罪が起きて解決する、それはそうだが、そうやすやすと型にはまってはいない(と作者が書いているがそのとおり)こういうところも型破りな、変わったスタイルで面白い。

積読整理も捨てたものではないです(堀起こしながらニヤケて自画自賛)


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