ミステリといえるようないえないような、面白くてじんわりと怖い、という短編集だった。
北村さんは「陰のある短編集」にしたそうだ。
馴染んだ夫婦におせっかい女が噂を耳に入れる。そういえば夫は理由をつけて私の知らない新しい万年筆なんかを持っている。夫婦の間はちょっとしたことで揺れる。
☆腹中の恐怖
お母さんは息子の様子がおかしいと気がつく。女の写真を隠し撮りして溜めている。息子に聞くとただ好きなだけだという。その彼女が結婚して妊娠した。息子は異常に喜んで機嫌がいい。なぜ？
☆微塵隠れのあっこちゃん
ものにすっぽり埋まって遊ぶのが好きだった。子供の頃は弟に落ち葉で埋めてもらった。そんなあつ子はデザイン事務所に勤めている、代理店の嫌な奴は、クライアントが満足すれば自分の手柄、まずいと現場のせいにする。あれこれあって、ええい微塵隠れだ！ という話。余談が面白い。
☆三つ、惚れられ
社内の人間関係は思わない展開をする。あっけらかんに見せて底意地の悪い女もいる。
☆よいしょ、よいしょ
以前、ちょっとした物を書いて賞をもらったことがある。そのときの雑誌が出てきたがそこに詳しいプロフィールが載っていた。今頃になってそれが仇になった。息子に絡む意外な展開。
☆元気でいてよ、Ｒ２－Ｄ２
喫茶店で友達相手にしゃべる女がいる、話題は四方に広がっていくが、面白くどこかさびしい、女はＲ２－Ｄ２に似たコーヒーメーカーにも声を掛ける。
私引っ越すのよね、理由がベランダにのびてきた木の葉がアフロになってきたので散髪するように頼んだの、大家さんはばっさり切ってしまって、見おろすと大きな丸い切り株が白すぎて。
…… そういうわけよＲ２－Ｄ２
とは書いてないが、そんな話。一人称で喋り捲る女がなぜか身近に感じる。
☆さりさりさり
仕事で忙しくしている姉の家に居候をする。今までは猫がドアを掻く音で目が覚めていたが、姉の家にはそれがない。
☆ざくろ
ざくろの木ってあの世とこの世の境に生えているんだって。
ペルセポネーはざくろの実を食べた。少しだったのであちらに行っている時間も短い、その時間が「冬」になったんだって。
おばあちゃんはいろんなことが分からなくなってきた、今は６０歳、ホントに私はおばあさんになっているのだろうか、今はいつなのここはどこなの。
☆スイッチ
雑誌の編集者が、産休をとって子育てをしている。そんな時一人の老大家から名指しで原稿をもらった、そうして彼はすぐに亡くなった。
果てしない育児の時間にスイッチが入った。よしいい本を出そう。
「腹中の恐怖」が面白い、人間の心の奥にある怖さがジワジワ沁み出してくる。
「さりさりさり」の中の「蛇と蟹」の恩返し、昔話も思えば怖い。
すぐ読めるが、じんわりと怖い、人の生きる陰にある恐怖のつぼが軽く押される。
余談ですが
「スターウォーズ」のね、ＢＢ－８だけど。体が回るのに頭が滑り落ちないのね」
「あぁ磁石でしょう」
なんだ。サイトまで調べた私って、、、ｗｗ。