期待して読んだ「光媒の花」は6章に別れて、それぞれの話は微妙につながっている。読み終えて、彼の本領はここにはなかったなと思った。
道尾秀介は、ミステリーという土壌に咲いた大輪の花である。巧みな仕掛けに驚愕の結末、文章だって美しい。だが2年という歳月をかけて紡ぎ出された短編集「光媒の花」(集英社)を手に取れば、気づくだろう。その地に安住せず、より広い場所へと歩みを進める作家の姿に/blockquote>
「向日葵の咲かない夏」「鉤の爪」を読んでいたので、そう言う評があるのだからこの本も読んでみよう。
「光媒の花」は
6章に別れ、今まで感じていた作品とは傾向が違う、淡い哀しみの色彩を帯びた短編集になっている。それぞれは微妙につながっていて、東野圭吾の「新参者」のスタイルにも似ている。だが、彼の本領はここにはなさそうだと思った。
静かな文芸作品のような香りのする文章はミステリを離れた読み物にいいかも知れない。「向日葵の咲かない夏」は前に感想をメモした。
「鉤の爪」は仏像についての薀蓄が話に厚みを出していて面白かった。(もう既読山で風化したのか書評が見つからないけれど)
どちらも異常な舞台設定の中で、ミステリアスな展開があり、犯行の動機もうまく考えられて楽しめたが、最終段階に入り多少密度が薄れていくようで残念だった。多方面での受賞作を読んでいないので、もう少し評価の定まったものを読むのもいいかもしれない。
道尾さんいいなぁ
これから楽しみが増えた。「光媒」というのは初めて知ったので調べてみた。最近見る本物とまがうような観葉植物に使われているらしい。
分かりやすい「風媒花」というのは武田泰淳の同名の作品を読んだことがある、カメラに凝っていた頃、タンポポの綿毛の旅立ちを撮ろうと仲間で頑張ったが技術が少し進歩すると簡単に写せるようになった。名作には程遠いけれど。「
武田泰淳だと「ひかりごけ」のお再読もいいかなぁ。読んでみようかな。
「向日葵の咲かない夏」「鉤の爪」を読んで面白い作家だと思っていたので、そう言う評があるのなら、と思った。
それが、静かな文芸作品のような香りのする文章がつづれられてはいるが、新しい試みは多少不満が残る。
ミステリを離れた秋の軽い読み物にはいいかも知れないと感じる面もあるが、彼の今までの印象とはすこし距離があった。「向日葵の咲かない夏」は前に感想をメモした。
「鉤の爪」は仏像についての薀蓄が話に厚みを出していた。
どちらも異常な舞台設定の中で、ミステリアスな展開があり、犯行の動機もうまく考えられて楽しめたが、どちらも最終段階に入り多少密度が薄れていくようで残念だったが。多方面での受賞作を読んでいないので、積んである中から、煮詰まったものを読むのもいいかもしれない。