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ガラスのなかの少女



ジェフリーフォード

蝶を飼っているいんちき霊媒師、幻惑的筆致。 「アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作」と言うので、ブラッドベリ好きはフラッと来た。それがどうだ、アメリカ探偵作家クラブに一言言いたい、時間を返して。

話は霊媒仲間だった少年が80歳を超えてから話す思い出で、67年前彼が17歳のときの出来事だ。

彼ディエゴはメキシコ移民の孤児だったが、今はいんちき霊媒師で詐欺を働くシェルに引き取られて、交霊会の助手をしている。
もう一人の仲間は大男で、大道芸をしていたのだがボディーガード兼運転手になり、これも詐欺の手助けをしている、アントニー・クレオパトラというふざけた名前が気に入っている。

土地の名士の娘が行方不明になり、インチキだが霊を呼び出し交霊詐欺は成功するが、そのときガラス窓に少女の姿が映ったのを、シェルが見る。

三人はその少女を探し始める。

霊媒師だという謎の美女も加わって、死体を見つけるが。

一方土地の富豪に取り入って、得意先を増やそうとしていた矢先、使用人も含めて全員が惨殺される。

下働きのメキシコ人の少女が一人生き残っていた。
シェルは自宅に彼女を保護し、ディエゴは一目で恋をする。

禁酒時代だった、背景に酒の密輸組織がいるような、KKKの地下組織が生きているようなと、とさまざまな情報を得るが決め手ではなかった。

シェルの昔仲間、芸人や、見世物になっていた怪しげな人たちに助けられて、話が進んでいく。

異形の怪物に襲われたり、危険な罠が待ち構えていたりする。

屋敷に愛蝶室を作って育てているシェルというリーダーが複雑で、繊細で、心の動きに敏感で、この詐欺を成功させているのだが。

変化に富んだストーリー運びはおもしろい。ただシェルがつかまるあたりから、あのギャンブラーでマジックの天才がなぜ、と少しトーンダウンするのが惜しい。

いい終わり方で読後感も暖かいが。散漫なところも感じられるのが残念。

面白要素を詰め込んだちゃんこ鍋風だが、読んで損はしないが得もなし。


お気に入り度:★★★☆☆
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