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厭魅の如き憑くもの



三津田信三

これはホラーだな、と思ったら本格ミステリにもなっているそうだ・・裏表紙から

その村には、山の上に神櫛家、少し下の小山の上に谺呀治(かがち)家があった。

谺呀治家の祖母は憑座(よりまし)という憑き物落としの重要な役目があった。それは代々受け継がれて来た。
祖母の叉霧(さぎり)という名前も娘の嵯霧、孫の紗霧へと読みは同じでも表記の違う形で受け継がれている。
落とした憑きものはお札に移されて緋還川に流されてきた。

そして四人が怪死を遂げる。
死体は共通して、カカシの笠をかぶり蓑をつけていた。
山神信仰も案山子様を祭ることもまだ行われていた頃。
何の祟りだろうといぶかしむ。

フラッと訪れた、怪奇作家で、話の収集家である刀城言耶は、この謎を解く探偵役になる。

日本の古来からある、憑き物落とし、生霊や死霊や、ものの化、それを払う儀式は今でも生きているようだ。
風習にかかわる民俗学的薀蓄は、とても興味深い。

三津田信三は、本格ミステリの枠内で怪奇と幻想を単なる物語の装飾としてではなく、本質的な構成要素として扱い続けている稀有な作家である。

合理的科学的な生き方が現実的であると思われている今、こういう風土が今も残っている、土俗的な時代がかった非現実の世界のようにも思われるが、孤立した山の中に残っている因習や、神頼みは、もっとも自然に近い人々の生み出した魂の物語かも知れない。
次第に物語の中にしか見られなくなっているかもしれないが。不思議な物語で面白かった。


お気に入り度:★★★★☆
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