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弥勒の月



あさのあつこ

信次郎と清之介の思いがクロスする。

あさのあつこさんの時代物。読みやすく後味がいい。

面白かった、江戸の町を背景に、少し台詞などに現代感覚の残るところも馴染みやすく読みやすい。
同心の信次郎と岡っ引きの伊佐治のコンビが事件担当、信次郎は父が亡くなった後、役目を引き継いではいるが、年相応の鬱屈した思いがある。
伊佐治は生一本で世話好きで頼りがいのある人物だが、一人で、勝手に生きているような信次郎をもて余すこともあり、理解できない部分がある。
しかし信次郎の勘の鋭さと変人ぶりに辟易しながらも、信頼して世話を焼かずにはいられない。

最近結婚したばかりで、気立てのいい、小間物屋「遠野屋」のおかみが橋から飛びおりた。

入り婿の清之介は、先代に見込まれ、眼鏡どおりに身代を守り、以前にもまして繁盛させてきた。
なぜ、その妻が死ななければならなかったのか。
夫の清之介にも見当がつかないと言う。しかし、彼の物腰には何か油断のできない、ある殺気のような緊張感を信次郎は感じた。
信次郎と清之介のもっている、形は違ってもどうにも折り合いのつかない、重たい心の荷物がうまく書き込まれている。
妻の死を悲しみ、大金を出してまで捜索を頼むのは清之介の本心か。

夜が来ると、袈裟がけの見事な一刀で次々に人が死んでいく。
さぁこれをどう見るか。

清之介と信次郎、伊佐治のキャラクターが際立っている。


お気に入り度:★★★★☆
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