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影法師



百田尚樹

身分の差がある家の二人子供の辿った運命。

「刎頚の友」の契りを交わした二人は同じように学問の成績は抜群で、剣の腕も揃って御前試合に出るほどに優れている。

だが家柄といえば、下士の勘一と、中士の彦四郎。
家を継げず養子に出ることしか道の無い次男の彦四郎と、下士で貧しくはあるが長男の勘一、という生まれの違いが、二人の運命を大きく分ける。

勘一は藩主に認められ、ついに国家老になった。
いっぽう彦四郎は、出奔して、晩年に帰国し不遇のうちに死んだ。

勘一は二十年あまりの江戸詰めを終え帰国したが、彦四郎の死を知らなかった。
そして、刺客に襲われ、一命を助けられ、それをきっかけにして彦四郎の過去が次第に現れる。

彼は如何に生きて死んだか。
「刎頚の誓い」はどうなったのか。

わずかな運命のずれ、時間のずれが大きく生き方を変えていた。
しかしそれだけだったのか。

生き残った片割れの、友を失った悲憤と、恵まれなかった友の生涯を思いやりながらの爽やかな幕切れが、痛々しくも悲しい。

気負いの無い読みやすさで一気に読み切ることができた。


お気に入り度:★★★★☆
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