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復元 幻の大寺院―新薬師寺の謎に挑む



NHK「復元幻の大寺院」プロジェクト

久しぶりに、白毫寺から新薬師寺を訪ねたら、行方不明だった新薬師寺の遺跡が見つかっていたということを今頃になって知った。37体の仏、眷属が並んだ大金堂の発掘レポートを読んでしびれた。

奈良の東、白毫寺に最近行ってないと気が付いた。まだ有名な五色椿は咲いてないが、混まない白毫寺なら今だ。新薬師寺も近い。と思いついて、白毫寺の閻魔様に挨拶に行った。

一車線ぎりぎりの道は空いていなければ走れない。一か所しかない駐車場で椿の店を開けていた方としばし椿談義。珍しい椿を見つけたが、どこに植えるの?また。という渋い顔を見てあきらめた。

藪椿がぽつぽつ咲いて子福桜も開き始めていた。ここは信貴皇子の別邸とか。あまり報われない地位なので争いから生き延びた方。学校で習った
石ばしる 垂水の上の さわらびの 萌え出づる春に なりにけるかも
という歌などをおもいだしつつ、、、。新薬師寺に回った。
ここでイカルが囀っていた。受付で名前を聞いたが、調べると「斑鳩」のもとになった鳴き声だとか。そうは聞こえなかったけれど。帰って、姿と鳴き声をyoutubeで聴いてみた。

白毫寺を早々に切り上げて 新薬師寺へ。
<天平のバザラに会いに行こう>というキャッチフレーズをどこかで見たか聞いたか、しばらく会っていなかった十二神将はお元気だろうか。
ところが、そこで知ったのだが、奈良教育大の発掘調査ですごいことが分かったらしい。それで本を探して読んでみた。

当時光明皇后の発願で作ったという、巨大建造物の遺跡が見つかったのだ。そして奇跡的に東大寺に匹敵するか上回る建造物があったらしいと分かり、発掘が期待に満ちて進められた。プロジェクトチームは遺構の計測、歴史書からの推測、同時代の建築様式を中国にまで求め、ついに七仏薬師金堂の存在をほぼ確かめることができた。
あまりの規模の大きさに半信半疑ながら掘り進むうちに、建築様式、建造法、など高度な技術の粋を集めた奈良時代の遺跡に手が届いた。
七体の薬師如来に脇侍の日光月光菩薩がそれぞれ二体ずつ横45度に向いて並び、両脇に十二神将が6体ずつ、四方に四天王を配した見事な七堂伽藍の巨大な寺院であったらしい。

専門ごとに進捗状況や、復元の過程のレポートが読める。臨場感もあってワクワクしながら読み終わった。

2010年にNHKスペシャルで放送済みと知ったのはとっくに手遅れだった。が、『DVD放送中です』という貼り紙を見た。
DVDの始まりは、建てられては災害で損壊し、ついには仏もろとも消失して、今の本堂(食堂であったらしい)だけが残った。その大雑把な歴史の後で、CGでの色彩の復元の様子が、これが素晴らしい。
女優「はな」さんのナレーションが雰囲気にマッチして感動を盛り上げた。
奈良時代の色彩は「ヨマネス・イッテンの色彩論」に通じる繧繝彩色と呼ばれる基調の三色から作られた色系をぼかしていく手法で、伐折羅大将の、赤く逆立った怒髪に、今でいう甲冑?の鮮やかな色、手の込んだ文様が金色の中にきらびやかに蘇って、天平文化の息吹が畏れと美しさを伴って再現されて驚愕的だった。

最後にこの寺の建立に込めた光明皇后の祈願と、慈悲深く生きた歴史が一章あり、その時代背景も理解できた。
その後一大プロジェクト大仏像造立の完成間もなく聖武天皇が崩御され、それを追うように亡くなった皇后の祈りはどのくらい届いたのだろう。

復元された平城京も当時の面影だけがのこって、人々はみな移り変わっている。
これからも発掘作業は続くそうだ。

今こうして当時をしのぶことができる。発掘作業には歴史の重みと多くの未知の出来事の解明が潜んでいる。期待が詰まった感動的な一冊だった。


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