作者が自費出版して人気が出たそうだ。ただ、2,4作が先に翻訳出版されていてこの作品が後回しになったそうでどうかなとは思ったが、シリーズならストーリー的には一作目からが順序だろうと思った、売れる作品が先に出たというのは、ちょっとこの作品の評価について不安はあった。
探偵役は、城を持つ貴族の出身で主席警部のオリヴァー・フォン・ボーデンシュタイン、部下のピア・キルヒホフ警部のコンビで、ピアは別居している医者の夫がいる。
コンビを組んだ最初の事件は上院議員のピストル自殺から幕を開ける。また森の中にある展望タワーから若い女が飛び降り自殺をしたらしい遺体が見つかった。これがイザベル・ケストネーで解剖の結果毒殺されたとわかる。
だがこの女の評判は最低で金に汚く傲慢で徹底した憎まれ者だった。
大学の医学部仲間が経営する病院。人間関係がつながっている乗馬クラブ。怪しい調教師。中には表沙汰にできない男女の関係もあって、なかなか複雑な人たちが登場する。
残念ながらそういった人たちを調べて捜査するオリヴァーとピアのコンビは、背景はわかるが、目立った活躍がないので、今回あまり印象に残らない。
ただ、初めてお目にかかったオリヴァーって、まぁ男ってこんなものだよねということだし、ピアにも、そうそう厄介な男より馬がいいよと声をかけたくなる、こういうところは好きかな。
オリヴァーは育ちがいいので紳士的で感じはいいが特に活躍するということもないし、ピアも紹介程度だと思った。
一応参考人で調べても勾留しないで家に帰す、怪しいし外で何をするか不安なのに、あっさり帰すのがドイツ風なのかなと思った。
ストーリーも作者の意図はよくわかるが、人間関係も、事件も深いところまで興味を惹かれるものではなかった。
医者仲間のつながりが、「特捜部Qのキジ殺し」のような学生組合のつながりなのかと思ったがそうでもなかった。
殺されたイザベルの性悪ぶりが際立っていた。これでは殺されるでしょう。
それでも、関係なさそうな上院議員の死も一緒に解決するあたり結末に不足はない。重くなりすぎていないし気楽に読めた。
この警察官コンビの印象がいいだけに、ストーリーが面白ければ読み甲斐があるかもしれない評判がいい次回作に期待しよう。