1996年発行。それでも中で取り上げられている本は、とても共感を持ったし、紹介されている本を読んでみようかと思った。
単に本の紹介でなく、私も同じ本から同じような感動を受けたことを思い出し、ナルホドと納得した。
エッセイはそれぞれの感性が出る、人によっては全く異なる読後感を持つことも当然だが、群さんとは生き方や受け止め方は異なった部分もあるが、共通している部分は特に面白かった。
森茉莉「贅沢貧乏」 群さんの目から鱗が落ちた本に入っている。「自分さえ気に入っていれば、人がなんてったっていいじゃないか」これがいい。「どんな状況にいても自分は自分だ」というのに、その通り、きっぱりしている。
「檸檬」「山月記」は感覚的な読みで,
これらの作品を初めて知ったのが学校の国語の教科書というのも出発は同じ。
教科書を読んでよく分からなかったところが後年読み返し、中島敦の「虎」を読んで、これは人に対するおもいやりでもある。自分が好きになれない人を全く拒絶するのではなく、自分とは異質なものとして認めつつ、理解をするということを教えてくれているような気がする。哀しいだけでなく、一縷の救いがあるのだ。やっと私も「山月記」を読んで、じーんと出来るような歳になったのかと、しみじみとした
と書いている。
「世間の約束事への挑戦」
「妖婦の世界」
「母娘の絆」
などは群さんの生活観。
「手作りの生活」
温かい色合いを染め出す草木染のくだりは、読んでいるだけで豊かな気持ちになる。
日本古来の色の呼び名は趣がある。あまり使われなくなったけれど。
「古典ってこんなに面白い!」
という章もある。
言葉遣いや馴染みのない漢字も読みこなしていけばこんなに面白いものはない。昔も今も変わらない、滑稽さに手を打つ部分もある、生活の形は違って来ても生きている人がある。
時代を経ても人は人、 古典は面白い。
自分の面倒は自分で見るという独立した生き方でありながら、群流の読書の世界が伺われる味のあるエッセイだった。
ほかに「ゆるい生活」がある。題名からもう読みたい気分になっている。亡くなったけれど森茉莉さんのユニークな「贅沢貧乏生活」も豊かでいいなぁ。