乃南アサ
ありそうな話だが、それが恐ろしい。
日本工芸を材にした完成度の高い面白い短編が6つ。
「氷雨心中」
酒蔵に落ちて、祖父が女と死んだことを知った。
「青い手」
事件は表に現れないまま終わるが、読後に思い当たる、
そんな風に生活の裏から(物語の裏から)滲み出す暗い部分が、
ミステリアスな香りを漂わせる。
お線香はこうして作るのか、お香も。
「泥眼」
日本舞踊の名手に泥眼の面を頼まれた能面作家のはなし。
女の一途な想いが、面を作ることが、二人の執念のようになって迫ってくる。
「夜離れ」
みな女心の妄執というか、こんな女にとりつかれたら男は恐ろしいだろうし、
女は苦しいだろう。
お気に入り度:★★★★☆
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