シリーズ4作目になるが、ますます面白くなっている。この作品は作者が関心を寄せたという、優生保護、人種差別などの理由で、人々を隔離するという悪法の元で、被害者になった女たちの歴史が元になっている。今回は社会派のミステリでこれもベストセラーだとか。
1987年の出来事と、2010年になって特捜部Qが捜査をはじめた事件の発端と結末が分厚い一冊にフルに詰まっている。
恋人のモ-ナに夢中で、そうでなくてもやる気の無いカールに、またもや元気なローせが失踪事件の再捜査を持ち込んでくる。周りはインフルエンザの流行の渦中で、アサドなどは見るも無残な有様。カールは事件どころではなくウイルスから逃げ回っている。
ところが1987年に失踪者がまだ4人いることをアサドが突き止めた。5人が同時にいなくなるのは異常事態で、再捜査が始まる。
政党を立ち上げたリーダーはクアト・ヴァズという婦人科医だった。彼は北欧医学賞を受賞した名士だった。その受賞祝賀パーティーにニーデ・ローセンは夫と出席していた。
ニーデを見つけたクアトは「淫売だ、地獄に落ちろ」と言って公衆の前で罵倒する。そこに居合わせた記者も彼女の過去を突きつけて暴露した。
二年後夫は亡くなり、ニーデは不幸の種をまいた人々に復讐する準備を始める。
彼女の不幸は、何も知らないで従兄弟に妊娠させられた時に始まる。身持ちの悪い女や知能の劣った人々が入る矯正施設にいれられ、反抗のたびに狭い懲罰房に何度も監禁される。時には裏切られ犯され、妊娠中絶をさせられその医者にも犯される。
その医者がクアト・ヴァズだった。
ニーデは島から密かに持ち出した毒草を育て増やしてそのエキスをとりだして5人の殺害の準備をする。
1987年、ニーデの計画は実行に移された。
ニーデがどう生きたか、復讐の的になった人たちとはどのように関わったか、島の孤立したコンクリートの壁で囲われた施設からでて、ニーデは年老いた。
この話はこれで終わりではない、この本の面白さは最後まで読んでわかる。
特捜部Qメンバーは健在だ。
カールは鼻水もやっと止まった、モーナに恋人ができたのではないかと悩むが、事件の捜査で時間が無い。そのうち元妻ヴィガと不利な条件で離婚ということになる、何とか頭を働かせて被害を食い止め、めでたく別れる。捜査中に狙撃されたが事件は核心に近づきつつあると思う。
元同僚のハーディの容態は変わらなかった。だがモーデンが連れてきた友人ミカが理学療法士だった。彼はハーディに治療を試み、少しずつ快方に向かってくる。
クアトの家に資料を盗みに入ったアサドは襲われて重症を負う。しかし彼の過去は依然闇の中。いろいろなヒントだけで謎の人振りがますます深まってくる。続きが読みたい。
ローセは5人姉妹だった。初めてわかるが、今回はユアサが出てこない。ローセの奇行振りに振り回されるカール(笑)
まだこれからが楽しみ。外れが無い。
それから、矯正収容所は過去には欧州各国にあったそうだ。
以前見た映画「マグダレンの祈り」もイギリスにあった収容施設(教会)の話だった。