「THE MAGDALENE SISTERS」 (2002年 英・アイルランド)
監督:ピーター・ミュラン
製作:フランシス・ヒグソン
脚本:ピーター・ムーラン
出演:ノーラ・ジェーン・ヌーン(バーナデット) アンヌ・マリー・ダフ(マーガレット) ドロシー・ダフィ(ローズ/パトリシア) アイリーン・ウォルシュ(クリスピーナ)
キリストに救済された売春婦のマグダラのマリアの名に因んで名づけられた、
実存した修道院が舞台の実話を映画化したもの。
この修道院はダブリン(アイルランド)の郊外にあって最近、1996年まで存在した。
結婚パーティで従兄弟に犯されたのが原因で収容されたマーガレット、
美貌が男性の目を惹くという理由のバーナデッド、未婚の母になったローズとクリスピーナ、
それぞれの家族にとって、こういう堕落した出来事は「恥」だという理由で、信仰と労働によって
矯正させるという名目の修道院に収容し、彼女達は生涯をここで暮らさなくてはならなくなる。
門には見張りが立ち終始監禁された状態で働かされる。
仕事は汚れ物の洗濯で、毎日洗っては干し洗っては干し、ただ単調なこれの繰り返しの毎日である、その上外部からの洗濯物の注文で得た利益は教会に入る仕組みになっている。
教会内部の権力者である神父やシスターは彼女たちを奴隷のように扱い時には裸にして並ばせ身体を見て笑ったりする。神父は性行為の相手をさせる。
人権も自由もない暮らしの中で、自己を見失うもの自殺を試みるもの反抗して拷問を受け、
髪を刈られるものなど、家族に見放された上煉獄のような暮らしが続く。
若い女性は清廉で質素で純潔でなくてはならないという社会の中で、
故意であってもなくても、純潔を失えば魔女狩りのように捕らえられ、教会に隔離され、
次第に人としての尊厳が奪われていく。
信仰の名を借りた教会内部の腐敗は、外に知られることもなく、少女とも言える年齢の者に恐怖を与え続けた。
こんな中でついに脱走に成功した二人の女性の精神力の強さに感動する
権力を持つものの傲慢さが持たないものを抑圧し、それが目的のためには当然とされた閉ざされた空間で、密かに長い時間虐待が続けられていた。
それにも拘らず、だれも救済の手を差し伸べなかった。家族の「恥」を隠蔽するには格好の施設だった。
社会とはそういうもので、人間とはどうしようもない強さと弱さを併せ持っている。
ただ社会がどうあろうと人がどういうものであろうと許されないものがある。
このような現実が実際に存在した社会があり、人としての自由がいかに大切なものかを問うこの映画は、目前のシーンだけではなく、それを引き金にして考えられる多くのものを心の中に残した。
四人の少女役は個性的で素晴らしい。それぞれの背景をしっかり表現している。
ストーリーの流れに破綻もなくとてもいい作品だ。
ヴェネチア国際映画祭金獅子賞 他多数受賞