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白い殺意



デイナスタベノウ

クレイグ・ホールデンの「この世の果て」を読んだが、メモも本もデータファイルのどこかに紛れ込んでしまってがっかりしていたところ、これも北の同じ美しい風景が舞台だというので読んでみようと思った。

アラスカ湾沿岸の国立公園が舞台だか、どうも架空の地らしい。
それでも白い冬、深い雪の中の暮らしや、先住民の捜査官ケイト・シュガックも魅力的で、面白かった。
第4作まであるそうだかその第1作。

重傷を負い、事件を引きずって退職したケイトは、故郷のアラスカの地で隠遁生活を始めていた。雪の深い冬、国立公園の開発のために来ていた公園レインジャーが行方不明になり、その調査に派遣された検事局の捜査官も行方がつかめなくなる。

そこでケイトに捜索依頼がくる。

在職時代の恋人に説得され、しかたなく危険な捜査を始めるが、手がかりがない。

公園の山では以前密かに採掘されていた鉱物資源の再採掘問題など、狭い入植地をめぐっての争いや、先住民と入植者の権利をめぐる争いがある。
調べているうちにケイトは銃で狙われる。

極寒のアラスカ湾沿岸から入った奥地を、スノーモービルで駆け回るケイト、そこでは先住民の彼女は幅の広い一族の人たちに囲まれ守られている。

アンカレッジ検事局時代の恋人、上院議員の父をかさにきて強気に開発を追い進めるレインジャーなど、興味深い設定。

主人公ケイトの堅物振りも微笑ましいし、ストーリーにあまり起伏はないが、文章は風景に馴染んで美しく躍動感もある。

ついでに、言葉を話すような表情が豊かな、ペットの大型犬のファンになりそうだし。

一読の価値のある一冊。
アメリカ探偵作家クラブ賞受賞

でも、題名がちょっと安直でありきたりでつまらない。

忘れられない透明な青に染まりそうな世界。この部分だけが過去の資料に残っていた。
クレイグ・ホールデンの「この世の果て」

美しい風景や文章は思い出すたびに心を癒される気がする。

ジユノーの街は、すぐ左をバウンダリー山脈の山々に、西側は細く深い水路のガスティーノ海峡で挟まれた岩棚に作られている。(略) ジュノー平原は街の真東にあたる山脈部分の最初の尾根を越えたところにあり、その広さはおよそ1万平方キロメートル。南極以外では世界最大の永久氷原のひとつだ。(略) なにもかも青かった。リーアンが近くで見た巨大な氷塊は驚くほど濃い色で、サファイアのように深い青色をしていた。十トンのサファイアがあちこちに転がっているのを見つけたと想像すればいい。家に持ち帰るためにひとつかふたつ自分で切り取るのだ。 「氷の密度が高いんだ」パイロットは言った。彼の本職はツアーガイドで豊富な情報を持っていた。 「反射と屈折に関係がある。氷河の氷は信じられないほど密度が高くてね。普通の氷よりずっと緻密なんだ。その密度の高さが青以外の光の波を閉じ込めてしまう。青だけは反射されるが、密度がさまざまだから、氷は異なった色調を放つことになる。」  色合いはそれぞれ違うのだろうが、リーアンには青一色の世界に見える。すばらしい景色だった。


お気に入り度:★★★★☆
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