弁護士青砥純子と、防犯コンサルタント榎本径のコンビが、難攻不落の密室の謎に挑む。
エレベーターで12階に行くには暗証番号でしか動かない。そこに介護サービス会社の社長室、副社長室、専務室、各秘書の待機室があった。社長室、副社長室、専務室は鍵のないドアで繋がっていた。
以前、社長室が狙撃され、被害はなかったが、社長の強い意向で、前面の硝子は厚みのある防弾硝子に張り替えられていた。
また、要所には監視カメラが設置され、入るには、管理人がチェックもした。
日曜日、管理人はテレビの有馬記念に釘付けだった。
落し物入れに馬券の入った封筒がおいてあったのを見つけたが、管理人室のテレビと監視カメラのモニターは視野範囲内に設置されていて不審者を見逃すこともない。
社長の死体は、ゴンドラに乗って窓拭きをしていた清掃員が発見した。
社内にある、介護システム開発課では、介護用の猿を訓練し、介護ロボットも作り、そのデモを行っていた。
専務は犯行時間には眠りこけていたというのだが12階は密室状態だった。おりしも副社長は不在だったので、専務の話は問題にされなかった。
弁護依頼を受けたのは弁護士の青砥純子だった。
彼女は紹介された犯罪コンサルタントという男、榎本径とともに、密室の怪を解くことになる。
逮捕された専務に夢遊病に似た睡眠障害はなかったか。
監視カメラは正常に動いていたか、
何も映らないマジックのような方法はないか。
榎本は職業柄、セキュリティーの知識は豊富な上に解錠の腕も抜群だった。
彼は、調査のために夜を選んで忍び込み、犯罪の痕跡を探す。
介護猿やロボットを使わなかったか。
さまざまな疑惑が生まれ、さらに混迷の度は深まっていく。
中ほどから、犯人の生い立ちなど倒叙法ミステリに移行する。
犯人と青砥、榎本の最後のやり取りは、榎本の面目躍如、冴えた推理が犯人の智恵に迫る。
犯人の巧緻を極める計画も興味深く、それをついに突き崩す爽快感もある。
このコンビは続きがあるらしい。