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脳男



首藤瓜於

江戸川乱歩賞だったか、審査では満場一致とか?の実は残念な作品だった。

作者が作り上げた「脳男」鈴木一郎。
生まれたときには、言語も行動も自由にならない脳障害をもち、その上感情がなかった。
それが見かけは普通人と代わりがないようでいて、いや時にはそれ以上のスーパーマンになった。
このあたりでまず引っかかる。
鈴木一郎として再生したとして、難しい感情の分野まで人らしく学習できるものだろうか、いかに人間離れした知能でも、人の感情の動きをゼロから学習して身につけられるものだろうか。とりあえず人型サイボーグだということで難しいことは抜きにしても、疑われず新聞社を経営したり、痛覚を制御したり出来るのだろうか。
火傷した後、皮膚移植の跡を残さないで治療できる天才医師はいるのだろうか。
途中で作者の意図も分かってくる。設定が面白いので最後まで読んだが、私の気持ちのどこかに抵抗感がありつつもまぁ読んでしまう、和製アメコミ風の変わった作品だった。

張り巡らされた時限爆弾装置につながる細いワイアーをすり抜け、幼児を救出するところは、トム・クルーズの「MI」や「エントラップメント」のキャサリン・ゼタ・ジョーンズを思い浮かべたし、犯人がヒントにした「ヨハネ黙示録」ではあの「セブン」を思い出した。
なんだか「アイ,ロボット」を裏返したような気分まで浮かんできたが。

そういった映画を思い出すということは、一歩違えば興味深い作品ではあった。
現実離れがしたスリルとサスペンスな味付けと思えば、超人「脳男」を創り出した作者なら、又今後、面白い作品でお目にかかるかもしれない。

映画になったと言うが、そちらの方は劇画風で面白かったのではないだろうか。

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もう一つ寝ると2019年。みなさまには変わらずよいお年でありますよう。
猪の後ろからのろのろついていきます、よろしく願いいたします。


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