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タイフーン

タイフーン 映画

タイフーン

「TYPHOON」 (2005年 韓)
監督:クァク・キョンテク
出演:チャン・ドンゴン(シン) イ・ジョンジェ(カン・セジョン) イ・ミヨン(ミョンジュ)

シュリ」「友へ/チング」「JSA」「ウラザーフッド」「シルミド」など最近の韓国映画はとてもよく出来ている。
「タイフーン」も、その「チング/友へ」の監督ということと、カン・ドンゴンとイ・ジョンジェの共演というので楽しみにしていた。


タイを根城にしている海賊にアメリカの貨物船が襲われ、核ミサイルの衛星誘導装置が強奪された。
これはアメリカから沖縄へ向かう極秘裏の輸送であったため、
海軍で特殊部隊経験のあるカン・セジョンが独自に捜索することを命じられる。
海賊のリーダー,シンは奪った誘導装置と核廃棄物とを引き換え、
それを使ってひそかに韓国に対してテロを画策していた。
シンに向かって捜査の手を縮めていくセジョンは、盗品の仲買人からシンの居場所を聞き出す。
シンは20年目に脱北を図って韓国に入り、皆殺しにされたチェ一族の生き残りだった。
彼の姉がウラジオストックの売春宿にいることを知り、セジョンはそこでシンを待つ。
二つの大型台風が韓国に迫った夜、テロが決行されることになる。


この監督はまりよく知らないが「トンケの蒼い空」という作品もある。
小さな漁村の出来事を描いた地味な作品で、その後に「チング」を見てこの「タイフーン」を見ることになったのだが、「チング」も田舎の子供達が大人になる話だった。
莫大な予算をつぎ込んで作ったと言われるだけあってスケールの大きな話であった。
ただ残念なことに完成度について不満が残る。
ストーリーは韓国に裏切られて身内を殺されたと思って成長した青年の20年間の悲惨な生涯と彼を追う将校の物語で、見せ場はシンと姉の愛、シンと将校の接触、テロ決行の日の荒れ狂う海で、阻止しようとする将校達とのアクション場面だが、
多少いらないかなと思えるシーンがあり、もう少し丁寧な説明で描いて欲しいと思われる部分もある。
確かに目の大きなチャン・ドンゴンは憑かれたかのような鋭い風貌で圧倒するし、
細身の将校のイ・ジョンジェはスマートできまっている。

この人の作品はどれも繊細で静かで美しい。「ラストプレゼント」の寄席芸人、「イルマーレ」の建築家「情事」の青年、ドラマ「白夜」でも印象は変わらない。
もう少しだけ整理して、大型のエンターテイメントというならあまり枝葉をつけないシーンを重ねて感情移入しやすい作品であって欲しかった。
そして夜のシーンでも、もう少し明度をあげてはいけなかっただろうか、近くにあって共通の文化もあるように思える韓国の映画は幕切れが哀切であるものが多い。
あまりこういった場面は好きではないが、人生観や宗教観に根本的な違いがあるのだろうか、
最期の場面に見られるようなシーンでは仏教的な転生輪廻についてはどうなのだろう、
死生観や罪の意識の受け止め方はどう違うのだろうか。

などと思いながら見た。力の入った作品で面白くはあった。