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きりこについて



西加奈子

きりこは「ぶす?」「可愛い?」

もう悩まない。ラムセス2世と本道を行く! 

きりこはぶすなのだ。ぶすという文字は全部太字にするほどとびっきりのぶすだが、両親は美男美女で、悪いところばかりとって生まれたと人は言う。
でも親は、繰り返すが自分が美男美女なので醜いという意味が実感できていない、世間とは美醜の基準が違う上に、わが子はとっても可愛いと思い、可愛いを連発しながら育てた。
だから本人はもちろん自分は可愛いと思っていた。
手紙がピンクなら洋服も振り振りの付いた可愛こちゃんスタイルで決めている。
入園式も入学式もそれで参加して話題になったが、可愛い子はこうでなくてはと思っている。

初恋をして、思い切ってピンクに溢れた告白の手紙を書いた。
ピンクの手紙を彼の靴箱に入れておいたところ、友達に見つかり、はやされ、彼からは「ぶすとは付き合わない」と手ひどく断られる。
ぶすと言われて、初めてきりこは自分はぶすなのかと思う。
そして、拒食症になって眠り続けたり、目が覚めて過食症になったりしながら、ついにはおおらかに自分を認めて育っていく、と言うとてもいい話だった。

その頃、捨て猫だった真っ黒い猫を拾って、ラムセス2世と言う名をつけて可愛がっていた。
この猫はまた飛び切り賢くて、きりこが書いた手紙の文章を直してくれたりする。

両親がいい。きりこがどんな時でも受け入れて可愛がる。
ぶすという言葉がただの言葉であることを証明する生き方がカッコイイ。
賢いラムセス2世も負けてはいない、キリコの片腕になって、おまけに近所のねこ仲間を束ねて、悠々と暮らし始める。

きりこは、自分がぶすだと知ってからも、様々な生活を送っていた恵まれない友人たちまで巻き込んで、悩める気持ちを楽に、生きることを楽しくしてしまう。もちろん又フリルの付いた服で決めている。
「ぶす」ってなに?「可愛いって?」

という本だった。

話題になっている西さんの本は。やさしく頭を通り越して、心までまっすぐに入ってくる、その真っ直ぐさに言葉が要らない。


お気に入り度:★★★★☆
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