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13階段



高野和明

「13階段」は、反町・鶴瓶・山崎勉・宮藤官などの出演した映画を見ていた。「最後は言わないでください」式の謎解きが面白かった。その話をすると原作がいい、お勧めだと聞いたので読んでみました。

映画の出来はマァ60点くらいでの印象でしたが、今でもよく覚えていて人に勧めたということは、テーマが興味深かったからかもしれません。

「それでもボクはやってない」という周防監督の秀作がありますが、これも「冤罪」をテーマにしているので、そういう流れかなと思いつつ。

事件当日の記憶がなくなっている死刑囚の冤罪を晴らすという物語です。記憶が無いということは、どんな不利益があるか。被害者に謝罪が出来ない、反省の色というのが現せないので、裁判官の情状酌量が得られない、犯罪動機が判然としない。アリバイが不明。結局、極刑を覆すだけの、強力な資料がない。

難しい事件の渦中にいる死刑囚は冤罪なので、それを晴らしてほしいという依頼が弁護士事務所に来る、それには高額の成功報酬が約束されていた。
そこで、過去に二度、死刑の執行現場にいたということが、一生の重荷になっている刑務官と、仮釈放で保護観察中の前科を持つ青年が、チームを組んで調べ始める。この青年は自分が起こした事件で被害者から莫大な損害賠償を請求され、その支払いで家族の生活を困窮させているのを知り、この成功報酬で償いたいと思っている。

死刑制度については、法律の持つ画一的な(前例と言う既成の)力に縛られている、立場による法解釈など人間の作った制度の使い方(使われ方)が、命を扱ううえでは慎重になり保守的でありそういうものだろう。新しい観点を探して主人公たちが動いていくところなど、言葉で説明される小説というジャンルは、やはり映画と違う厚みがある。

映画で見ていたので、犯人像が分っていて、映画の最後のシーンを思い出したが、改めて原作を読むのも面白かった。ゆっくり読むと作者の意図が理解できる。
内部協力がないとこういう事件に踏み込むのは、解決が難しいだろう。そういうところもうまく設定されている、
タダこれだけ深く推理できる人たちが、なぜ最後まで依頼者を確定できなかったのだろう。
と、ちょっと欲張ってみた。

実に面白かった。ずいぶん前に話題になったベストセラーなのだそうですが、納得です。


お気に入り度:★★★★☆
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