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ゴミと罰



ジル・チャーチル

アメリカの郊外に住む主婦が巻き起こす謎解き、ドタバタミステリ。訳者(浅羽莢子さん)はあとがきでドメスティックミステリのジャンルに入れ、日常ミステリ、家庭ミステリと言い換えている。

これは訳者の時代(1997年13版)にはこういう分類だったのだろう。ちょっと思いついてコージーミステリという語も調べてみた。これは日常・家庭内などと同じジャンルで、現在はコージーという言葉に落ち着いたらしい。

何を思ったのか、「アガサ賞最優秀処女長編賞受賞」につられてジル・チャーチルは三冊買っていた。
ところが読み始めると、夫の事故死で3人の子育てに追いまくられる主婦ジェーンの生活がユーモアたっぷりに書かれてはいるが、近所で開く集まりに持ち寄りの料理を届けるくだりでげんなりしてしまった。

なんと専業主婦というのは、つまらない料理の腕比べや、人情や趣味や、飾り付きの噂話に貴重な時間を使うのか。どこも同じというのがまた国を超えても煩わしい。というのでここで降りてしまっていた。
はじめての海外文学vol.3大人向け部門で読みますといった手前探していたのがやっと今頃見つかった。

そこで少し気合いを入れて読んでみた。ただ最初で主人公が走り回って作るニンジンサラダは面白く、へぇなるほどアメリカはニンジンを茹でて使うのかと納得。それもおいしそうだった。

さてこのあたり(舞台)はまぁ中流家庭が集まる新興住宅街で、子供の年頃も似ていて当番を決めて送り迎えをする(さすが銃の国)

週に一度家政婦が来て掃除をする。主婦同士の情報網で、いい家政婦、悪い家政婦にわけ、いい家政婦を取り合っている。
そしていい家政婦の代わりに来た見慣れない新しい家政婦が、隣の家(シェリィ家)の二階で絞殺される。

その日に料理を持ってきたメンバーの6人が怪しい。犯人は知りすぎている人たちの中にでもいるのか、通り魔かも、でなければ家政婦の裏の繋がりかもしれない。
好奇心の塊のジェーンはとうとう首を突っ込んでしまう。幸い亡き夫の叔父が警察にいる。
となりで殺人があればうちも危ない。用心棒代わりにその叔父が来る。
隣の親友シェリーだって、自宅で死人が出るということは恐ろしいばかりではない。彼女に裏はないだろうか。
というのは読者の邪推で、近寄るなかかわるなと言われても二人は止めて止まるものではない。6人のメンバーって実はどんな人達?
やってきた担当はイケメンの刑事、これもできる人で ジェーン達よりも経験もあり思慮深い。
しかし彼も手を焼く二人の暴走ぶりで、ついに横道にそれたり罠を仕掛けたり、対決してみたり、まぁ面白い。

専業主婦という人種の付き合いの面倒なところや、別れてほしいと言って出て行った夫に死なれて、恨みつらみと、寂しさを抱えながらの子育ても、女性作家の細やかさで暗い話をユーモアたっぷりに読ませる。

これは読んでよかった。後の二冊は又積んどくかもしれないが、ツンデレ風のイケメン刑事が少し気になりミーハーおばさんは読んでみたい気もする。

書き洩らしましたが、日常ミステリといっても謎解きは面白く、よくできた本格派でした。

横道にそれるが、落ち着いた日常を暖かく描写した本を読みたいとこの頃思うようになって、内容の勢いより、しみじみした世界に惹かれるようになった。きっと一時的な心境の変化のような気がするけれど。
読了本も増えて来た。


お気に入り度:★★★★☆
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