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初秋



ロバート・B.パーカー

映画「海辺の家」に似た父と子が家を建てる話のように思ったが、探偵スペンサーと、親に見捨てられた子という設定は少し違った。

両親が自分の都合で、押し付けあったり 、取りあったりする家庭の中で育った息子は、当然普通でない。

そこに関わりあったスペンサーという探偵は、数ある探偵の枠にははまらない。さまざまに個性的な探偵とは一味違った持ち味がある。スペンサーはごく普通の、真っ当な探偵で、私生活に乱れもない。体を鍛え、調理をして、生活はきちんと管理している。

それでも、彼の生きている世界はなかなかくせのある環境で、友達もそれなりに裏があったりするが、その中で智恵を働かせわなを仕掛け、それでも泳ぎ切っていると言うのが、スペンサーシリーズの面白くいいところだ。

そんな彼が、生きることに無関心で、周りに目もくれない少年をなんとか自立させようと思う。嫌な親に目も心も閉ざして、世界は自分の中だけだった15歳の男の子を引き取り、育てようとする。

離婚した両親には金に絡んだ思惑もあって、未だ金づるになる息子を手放そうとしない。
そこでスペンサーが探偵業を駆使して、両親の弱みを握り有無を言わさず追い詰める、なかなか胸のすくところ。

少年は、家を建てようというスペンサーに無関心だったが、彼は強引に自分の生き方を教え込む。男が未だ男らしかった頃の、男らしさを教え込むのが面白い。
しかし少年も、未だまっすぐなところが残っている。おしゃべりなスペンサーの話には難解な詩や文章が混じる。それを「どういうこと?」と聞くのがまたほほえましい。
少年の好奇心は、これも前向きでほほえましい。

家が建ち、少年は心身ともに成長する。背が伸び筋肉がつき若者らしい将来の目標も持つ。

読みやすく、おせっかいなスペンサーの面目躍如、感動的な一冊だった。


お気に入り度:★★★★☆
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