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夜叉桜



あさのあつこ

因縁の過去が尾を引く、物悲しい話。 「あさのあつこ」さんは、期待にこたえてくれる。どうなるの?と言う疑問には明らかに新しい展開で驚かす。そしてとうとう、と終わりまで読ませる。読みやすく楽しい。

これは前作を凌ぐ出来で面白かった。

信次郎は相変わらず、不可解な気質で、その気が無くても周りを振り回し、わざと言葉を選んで他人の弱みをちくちくと刺し、生きることに倦み疲れたように、掴みどころが無い。
だが、なぜか清之介の店に拘り頻繁に現れる。

伊佐治は彼を好きになれないでいるが、怜悧な切れ味を持つ信次郎の推理を認めて、心底からは憎めないでいる。

そして清之介は「遠野屋」を大店に育て上げ、店は繁盛して活気がある。

そこに女郎の連続殺人が起きる。 最初に殺された女は、「遠野屋」の手代、信三の幼馴染だった。

清之介は、彼を過去から開放してくれた兄に遭った。今、兄も逆境の中にいた。
清之介の過去はまだ兄を追っていた。

殺された女郎たちを調べていくうちに、「遠野屋」との関わりが浮かび上がる。

何か世間を越えたところに住み、すね者のような信次郎と、過去に縛られ、受けた恩義の重さでも自分を縛っているような清之介が、人間らしさを垣間見せる。


お気に入り度:★★★★☆
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