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閉鎖病棟



帚木蓬生

罪はどのように購うか、被害者と加害者の処遇については両者に深い溝があるのは当然だが、人の命の尊厳はどの方向からどのように見ればいいのだろう。医師の目でかかれた作品。

平成7年度 山本周五郎賞受賞作

犯罪を犯した人は、その状況によっては精神鑑定を受ける。最近はどのケースが異常で、またそうでないか、外部のものはわからないことも多いが。
この本は、精神の異常で罪を犯した人たちが入院治療のために入っている精神病院が舞台である。
開放病棟は届けを出せば外出もできる、治療によって平静を保つことができるようになった人たちがいる。閉鎖病棟は症状が重く、暴力的で外に出られない人たちが入っている。
昼だけ開く半閉鎖病棟もある。
入院しないで通院している人たちもいる。

これは、入院している人たちの過去や現在を、現在精神科の医師である作者が、患者たちを温かい目で見守っていることが感じられる、優れた作品だ。
登場人物の多い群像劇で、それぞれの悲しい過去が犯罪の原因になっていることがわかる。
放火、殺人、など平常なら死刑になるはずの犯人たちが、入院、治療の結果、静かに日課をこなしている、完全に治る見込みはなくても、助け合い、趣味を楽しみ、お互いを理解して暮らしている。
仲のよいグループができ、花見に行き、集団の遠足で近隣を歩き、演劇の台本を書き、演じたりもする。

そこに粗暴で患者をいじめ殴りつけ、みんなから恐れれられている重宗と言う患者がいる。
彼は通院患者の高校生を犯す。登校拒否の彼女は島崎さんと呼ばれ、陶芸教室に通っていてみんなに親しまれていた。
そして殺人事件が起こった。

精神の異常を抱え、追い詰められ、罪を犯した人たちが、病棟で暮らす日々を、書いている。


お気に入り度:★★★★☆
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