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容疑者



ロバート・クレイス

犬は友だち大切な家族。お互いに心を病んでいるが、言葉の代わりに心が繋がっていく。

ちょっとズルをして解説から読んだ。どんな犬なの? 興味津々だった。
北上次郎さんは

これは、心に傷を負った人間と犬の物語だ。ミステリー・ファンはもちろんだが、犬好き読者にも是非おすすめしたい、もう、たまらんぞ。

肉声を聞くような 笑

犬も猫も好き。今では猫語は少し分かる気がする。
だが我が家の犬はいなくなって随分日がたった。家に来た子供の時はくりくりした丸い眼で、それはそれは可愛いかった、茶色のコッカースパニエルで、大人になると金色の長い毛がふさふさと伸びて、優美になり声も低く、穏和で怒ったこともなかった。夕方の散歩にいくと逆光で長い毛が光の玉のようになって走る姿が今でも浮かぶ。病気になって、いなくなってしまってからもう犬は飼わないと決めた。

でもこの本を読んで、ジャーマンシェパードを連れて歩きたくなった。

勇敢なメスでマギーという。、仕事は出来るしとても賢い、がなんとも優しい雰囲気を持っている。元は有能な爆発物探知犬だった。軍用犬としてしっかり教育も受けて有能だった。だがアフガニスタンでハンドラーが撃たれた時にかばって腰を撃たれた。それが今も深いトラウマになっていて、訓練所でも優れた能力はあるが勇敢さに欠けるように見える。

そこに、パトロール中に銃撃に巻き込まれ同僚を失った警官スコットが来る。休養の勧告を無視して、現役を望み、犬と組む仕事を選んだのだ。

勧められた警察犬の中から、ストレス障害だといわれたマギーをとっさに選んでしまう。
この傷ついた2人組がいかにもたまらん、この結びつきを折に触れて、これでもかと書いてある部分は、泣かせる気? 解っていてもウルウルとなってしまう。

そんなマギーとスコットの友情が深まるにつれ、銃撃の犯人捜しも核心に近づき、危険が身近に迫ってくる。

通りがかりのスコット達に情け容赦なく発砲した犯人たちはマスクをしていて手がかりがない、殺された2人の側からつながりを探しだそうとする危険な仕事に足を踏み入れる。
全くの手探りがないように見えてもどこかに水漏れはあるものだ、マギーの鼻が手がかりをかぎだす。

そういったストーリーが面白い。
マギーの特殊な嗅覚は驚くべき力を発揮する。嗅覚の鋭敏さは全ての犬が持っているが、マギーのような犬種は特別に優れているそうで、その鼻腔の構造も、関知細胞も人とは比較にならないほど発達していると言う。

殺された相棒が「置いていかないで…」といった最後の言葉が悪夢になってスコットを苦しめる。マギーも死んだハンドらーを守りきれなかったことがトラウマになり、銃撃の音にもまだおびえている。それを乗り越えて、犯人探しは止められても止められるものではない。徐々にマギーも回復している。

これを読んでいる間中、スコットがそばで座っているマギーを撫でていると、なぜか私のそばにも犬がいるような気がしていた、余りに従順で勇敢で、言葉に敏感である、落ち込めば気配を感じて慰める眼をする。
マギーを読んでいる時はマギー一色になった。久々の一気読み。


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