エドガー賞、アンソニー賞、マカヴィティ賞などの新人賞受賞作
読みにくい、長い話だった。
最初のページなど改行がわずかで、べったりと活字で埋まっている、処女作だからか、やたら修辞や比喩に凝っている。
その上、最後まで一人称で話す主人公が、全くやりきれないほど煮え切らない、魅力がない。
と、こき下ろしてはみたけれど。
我慢して読むと、主人公ロブの悩み方にも慣れて、ストーリーの展開も少し面白くなってくる。
解決近い部分になるとスピードも上がってくる。
アイルランド、ダブリン近くの新興住宅地、後に森があって子供の遊び場になっていた。そこに三人の仲良しが入ったまま帰ってこなかった。やっと帰った男の子「アダム」は記憶がなかった。
20年後、アダムはミドルネームを使ってロバート(ロブ)と名前を変え、家も引越し、殺人課の刑事になっていた。
ところが彼が住んでいた寂れた町の上に、高速道路が通ることになる。そこは歴史のあるアイルランド、工事中の場所に遺跡が埋まっていることがわかり、発掘調査をしなければならない。
その発掘中に、ケイティという女の子が殺される。それも昔、行方不明になった子供たちと同じ12歳。
ロブは昔の事件が蒸し返されるのを恐れている。記憶がないというものの、再び話題になって自分の身元が明らかになり、捜査からはずされたくない、その上なにがあったのか思い出せない不安にも苦しめられている。
事件の捜査するうちに、フラッシュバックのように子供の頃の情景が蘇ることがあるが、それは直接二人の子供の行方につながるものではない。
彼自身も当時の極彩色の夢まで見て、あの二人は生きているのだろうかという疑問に悩まされている。
そして、捜査を進めるうちにケイティ事件は犯人の手がかりもみつかり、意外な真実がわかる。
さえない悩めるロブに比べて相棒のキャシーが魅力的、仲間に加わったサムもいい。
この二人が出ると少し面白くなるが、ロブが過去に悩まされるという、うじうじとした話は退屈で、本筋にかすりもしないで、結局昔の二人の行方は知れないまま。解決もされない。
ページも残り少なくなったところで、ケイティ事件は、意外な展開を見せて解決する。
このあたりは作者の実力は感じられるが、何しろ終始ロブの悩みに付き合う忍耐の要る本だった。
この後はサバサバッとしたタンパクなものがいいかな。