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木練柿(こねりがき)



あさのあつこ

「弥勒の月」に続く二作目
「宵に咲く花」「木練柿」が特に情感にあふれ、三人の、今、過去につながる話に事件が絡んで面白い。

「木練柿」はシリーズの核になる三人を巡る、4編の短編から成っている。

 「楓葉の客」
「遠野屋」でかんざしを盗んだ娘を、手代の信三が見つける。彼女は糸屋「春日屋」の一人娘で、親にすすめられた縁談がいやで、歩いているうちについふらふらと店に来て手が出たのだという。一方若い男が殺される。それがまた、女中の知り合だった。
これらが「遠野屋」に起きた事件の発端だった。

 「海石榴」の道
「遠野屋」で清之介が始めようとした、今で言う着物から草履、小物までのコーディネイトをするという企画が、「黒田屋」の殺人騒ぎで中止になっていた。もう一度始めてはどうかというときに、仲間に入るはずだった「三郷屋」が殺人犯としてつかまってしまう。言い訳のできない状況だったが、信次郎はあまりの出来過ぎた状況に不信感を持つ。

 「宵いに咲く花」
伊佐治の息子の嫁には、夕顔を見ると不可解な不安と恐怖を覚るという悩みがあった。
だが夫婦仲はよく、良く働く気立てのいい嫁で幸せだった。
ある日買い物に出て遅くなって帰る途中、暗がりで襲われる。
ひねくれものの信次郎は、相変わらずいやみな男だったが、勘は冴えていた。

「木練柿」
清之介が刀を捨てたのは、亡くなったおりんに出会って「遠野屋」の婿に入るときだった。生き方に迷っていた彼に、両刀を預かりながらおりんは「お覚悟を」といった。この言葉は今でも彼の中で生きていた。
平穏な日々の中で養子にして、可愛さが増してきた赤ん坊のおこまが散歩の途中で誘拐される。
平身低頭して助けを頼む清之介を前に、信次郎は「おこまは生きている」と断言する。


お気に入り度:★★★★☆
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