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氷の闇を越えて〔新版〕 ハヤカワ・ミステリ文庫



スティーヴ・ハミルトン

傷を持つ私立探偵マクナイトは、タフとはいえず繊細なところがある。ハミルトンの世界に一作目から入ってみた。

私立探偵小説コンテスト最優秀作・アメリカ探偵作家クラブ賞・アメリカ私立探偵作家クラブ賞受賞作

と沢山受賞している私立探偵が主人公。他力本願ながら何かの受賞作なら読んでも安心かなと買ってきたが、それでも時には期待はずれのものも多かった。
ハミルトンもデビュー作からと思いながら読み始めたが、面白かった。

警官であるからには覚悟はしているだろうが、やはり撃たれたショックは大きい。立ち直れないでいるが人生は続いていく。マクナイトの造形が彼の弱さも含めて魅力的だ。
シリーズが三冊出ているらしいので、これもリストアップ、そのうち続きを読んでみようと思った。
一方、いつの間にか机の隅で風景の一部になりかけている、話題のころに買ったハミルトンの「解錠師」や再読予定の「ライ麦」もちょっと気になりつつ。

マクナイトの胸には、ローズという男に撃たれた弾が残っている。彼が撃たれた時にパートナーが死んだ、それが深い心の傷になっている。
彼は二年後に警官を辞め、父親から譲られたミシガン湖畔のロッジを管理して暮らしている。
そこに知り合いの弁護士から、私立探偵にならないかと誘われる。
暫くして二人の賭け屋が殺される。そして終身刑で刑務所にいるはずのローズから手紙が来る。

ひょんなことで友人になった男は莫大な資産家の跡継ぎだったが、ギャンブルにおぼれ、その上、掛け屋の殺人現場に居合わせ、マクナイトに助けを求めてきた。
彼の友人の妻とマクナイトはかって愛人関係にあり、今でも吹っ切れていない。

一方、刑務所にいるはずのローズの手紙は外部のものは知るはずのない部分まで書き込んであった。

賭け屋が殺され、追われるものがなくなったはずの友人も行方が分からなくなる。

マクナイトは、若い頃マイナーリーグでキャッチャーだったという前歴があるが、肩を痛めて警官になり一度の挫折は経験済み、だが相棒だった同僚の死の記憶に今でも縛られている。
タフガイでもなく銃を向けることにも躊躇するマクナイトという探偵は、少々頼りない、主人公としてはあまりないタイプだが、いざとなれば拳と頭は働く。

作者が主人公に入れ込みすぎてない分それぞれの人物の輪郭が鮮明で、背景もいい。
読者の推測に沿っているかと思えば、はぐらかされる腕も納得できる範囲で、最後のページをまだ残すところで解決の兆しが見えるという型どおりの作品だが、ここにきてから解決の開放感を味わうのも楽しいと思う。
サブの登場人物も癖があっていい味だし、愛人とはこれからどうなるのかな、などとおせっかいながら読み終えた。


お気に入り度:★★★★☆
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