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点と線



松本清張

昔読んだ「点と線」、有名な東京駅の4分間の見通し。一体どんな話だったのだろう。
積読整理中なので読んでみた。博多の志賀島には数年前に行ったがそこが舞台だったのかと感慨も一入だった。

志賀島の手前で発見された心中死体は料亭で働くお時と、汚職事件で摘発された政府役人で課長補佐の佐山だった。

佐山は一人で旅館に泊まり、5日後に女性の電話で出かけてそのまま死んだ。
二人連れを見かけた人は女性が「ずいぶん寂しいところね」と言っていたという。

ベテラン刑事の眼に心中というには少し不審な点が感じられた。東京駅で目撃された二人連れなら食堂車の領収書が「お一人様」となっていたのはなぜだろう。
鳥飼刑事は状況を確かめようと足で調べ始める。

東京から知能犯捜査係警視庁捜査二課の三原警部補がやってくるが、ベテラン鳥飼刑事の勘と執念も生きている。

そして、この事件は警視庁の三原警部補の捜査に移る。
三原は4分間のホームの見通しについて調べを進める。あまりにこの偶然の出来事は出来すぎではないか。しかし事件当日にホームで目撃された安田は、北海道にいたという鉄壁のアリバイがあった。
病弱な安田の妻の随筆から彼女は「時刻表」の愛読者であることが明らかになり、疑惑が深まっていく。

すっかり忘れていたストーリーも、ところどころ思い出し、事件の解明が進むにつれて充分に楽しんだ。 やはり名作。

時刻表を見て旅に出た気分になっていた頃には、旅立ちの前にワクワクして時刻表で旅行の計画を立てた、わずかな時間で乗り継ぎをしたり、朝着いた知らない駅で顔を洗ってバスを待ったこともある。そんな私たちの世代には懐かしい作品だが、手軽なパック旅行が手に入るこのごろ、既にない4分間の見通しが鍵のこの作品も、いつか昔話になってしまうのだろうか。


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