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特捜部Q ―Pからのメッセージ―



ユッシ・エーズラ・オールスン

特捜部Qの三作目。ボトルメールで幕を開けるが、今回はローセの代わりに双子のユアサが参加する。

 特捜部Qを二冊読んで、3冊目のこの本を楽しみにしていた。ずいぶん遅くなってやっと読んだ。

北欧ミステリの「ガラスの鍵」受賞に輝く著者の最高傑作!と紹介がある。では勢いに乗ってGO!だったが。600ページ近くますます大部になっていた。

何しろ、奇人変人の助手のアサドともローセともすっかり友人気分、カール警部補とは同僚気分になって話に馴染んできた。
今回はボトルメールが始まり。波に運ばれたビンの中の手紙なんてロマンかも。
ケヴィン・コスナーのあのかゆくなるような悲恋映画が頭の中に顔を出したりした。
海に囲まれたデンマーク、入り組んだ湾のコペンハーゲンならこういう話も生まれるのかな。

特捜部Qに、未解決だった誘拐事件の証拠品らしい手紙が入った壜が届いた。スコットランドの北端で仕事をサボって海を見ていた警察官が拾ったものだ。
手紙は痛んでいたがかすかに文字が読み取れた。

書き出しは「助けて」

アサドとローセはこの手紙を拡大コピーして壁に貼り、何とかして読み解こうとしていた。二人は何を話しかけても夢中で壁のコピーを見上げている。
カールはしぶしぶこの捜査をすることになってしまった、もうこの二人に、ほかの事件の捜査は無理だとさじを投げた。

カールの方は、よその管轄であったが連続放火事件の方が気になって仕方がなかった。

ローセは体調が悪く双子のユアサがやってきた、これもまたローセに輪をかけて変人だったが顔かたちはローセにそっくり、さすがに双子。幸いにアサドとも気が合って捜査が進んで行く。
手紙には差出人はPとだけしか読めなかったが、海辺の小屋に監禁された兄弟らしい。
アサドは例によって「可哀想な兄弟をわれわれが」と息巻いている。

一方、子どものいる夫婦がいた。夫は仕事を口実に長期に家を空けることが多かった。
妻は夫の粗暴さを危険だと思っていたが、彼(この夫)こそ、兄弟を誘拐して大金を稼いできた犯人だった。

デンマークにも国教とは別に巷には小さな閉鎖的な宗教が多くあった。その中でもひときわ外部から隔絶した秘密結社的な宗教団体がいくつもあった。
彼はその中から子沢山の信者を選び、最初に二人の子どもを誘拐、身代金を受け取ると一人を殺し一人を親元に帰していた。
信者同士は家庭内のこのような事件は他人には恥だとして隠していて、外部に死んだ子は破門して追放した、というのを知っていた。財産のありそうな家族の中に入り込み、子どもを狙った犯人は常に成功を収めてきた。
Pもこうして誘拐された、手紙を書いた兄は殺された、帰されてきた弟は家族から離れた家に住んでいた。
しかしやっとここまで辿り着き、あとを追って来たカールたちには、家族ともども閉鎖的で協力しない。
手紙は優秀な科学捜査部門の処理と、二人の助手の活躍でほとんど解読され、カールの鼻は、手がかりを少しずつ嗅ぎつけ、追いつめながら犯人に近づいていく。

大筋はこうだが、その中には犯人との知恵比べのような部分もある。犯人の過去も現在も事件に深く関わっている。
夫を怪しんだ妻の追跡劇もある。
一方なぜか連続放火の話が入る。話は次回まで続いて持ち越しということらしいが、こんな話はどうも紛らわしく、何のかかわりがあるのだろうと思った。

そんなこんなで、少し捜査が多岐にわたり、すっきりしない部分もある。

犯人が早くから登場する倒叙ものは、話に厚みがあるが、今回は追跡劇など少しハードボイルドな部分が多い。

三作の中では一番の出来だと、裏表紙の力の入った紹介も分かる、標準以上の作品で読んでよかったのだが、比べるとどうも前作二つの方が面白かった。


お気に入り度:★★★☆☆
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